こんにちは、ハクです。
急変対応の最中、「記録お願い」と声をかけられる。
紙とペンを渡された瞬間、頭が真っ白になった経験はありませんか。
医師の指示、先輩たちの会話、鳴り続けるモニター。全部が一度に耳に入ってきて、「どれを書けばいいの?」と手が止まってしまう。僕にも、そんな経験があります。
会話は聞こえているのに、記録する情報なのか選べない。時計を持っていなくて、時刻が分からない。処置は進んでいたのに、内容が記録係に伝わらず、記録が抜けてしまった。記録係は「書くだけ」の簡単な役割に見えて、実は迷いどころがたくさんあります。
でも、確認する項目と声のかけ方を知っておくと、何から始めるかを整理しやすくなります。
急変時の記録係は、患者さんの変化と実際に行われた対応を、確認しながら時系列で残す役割です。
「書く」だけでなく「確認する」ことまで含めて、記録係の仕事です。分からないことを聞く、実施済みかを確かめる、手が足りなければ周囲に頼る。こうしたやり取りは、遠慮せずにやっていいことです。
この記事では、救命救急センターで働く僕の経験をもとに、記録する項目、困ったときの声かけ、教育用の記録例までをまとめました。読み終えるころには、次に記録係を任されても「まずこれをやろう」と動けるはずです。
※記録用紙、記載方法、担当者の役割は施設によって異なります。実務では勤務先のマニュアルに従ってください。
・記録係を任されたとき、最初に確認すること
・会話が飛び交う中で、記録に残す情報の選び方
・聞き取れない、記録が追いつかないときの声かけ
・紙のメモから記録を整理するときのポイント
・新人を支えるチームの関わり方

記録係って、一番「見ているだけ」に思われがちなんですが、記録した情報は、チームが経過を確認する手がかりになります。最初の一歩から、一緒に整理していきましょう。
急変時の記録係の役割は、患者の変化と対応を時系列で残すこと

まず、全体像をつかんでおきましょう。
記録係を任されたら、次の5つの軸を頭に置いてください。迷ったときの「戻る場所」になります。
| 記録の軸 | 確認する内容 |
|---|---|
| いつ | 異変に気づいた時刻、連絡・指示・処置を行った時刻 |
| 患者の状態 | 意識、呼吸、循環、症状、観察・測定した値 |
| どんな指示・対応があったか | 指示内容、実施された処置、薬剤投与など |
| 誰が関わったか | 指示者、実施者、情報を伝えた人、記録者 |
| その後どうなったか | 処置後の反応、再評価した結果、引き継ぎ内容 |
状態・対応・その後の反応を「つなげて」残す
「医師が来た」「処置をした」。この2行だけの記録だと、患者さんの状態や、対応後の変化が十分に伝わりません。
そのとき患者さんはどんな状態だったのか。処置のあと、どう変わったのか。ここがつながって初めて、記録が「経過」になります。
日本看護協会の「看護記録に関する指針」でも、予期せぬ事態では、発見状況、観察内容、対応後の反応などを時刻とともに残すことが示されています。
たとえば血圧が下がった場面なら、次の流れをたどれる形にします。
・測定した値
・報告した相手
・受けた指示
・実施した内容
・再測定した値
観察項目を確認したい方は、【関連記事】ABCDEアプローチ(ABCDE評価)とは?救急看護の一次評価を図解で解説も参考にしてください。
記録は、チームの「確認の手がかり」にもなる
対応の最中に「さっきの処置、何時だった?」「そのあとの血圧は?」と聞かれることがあります。そのとき、手元の記録があれば、チームは迷わず確認できます。
ここで注意したいことがあります。自分の記録にないからといって、「実施されていない」とは言い切れません。
処置は済んでいるのに、記録係へ情報が届いていないだけかもしれないからです。僕もこの「情報が届かず、記録が抜けた」経験があります。
だから、記録する人と、観察・処置する人との情報共有までセットで考えることが大切だと感じています。
急変対応全体の流れは、【関連記事】急変時の看護師の対応|異変発見からABCDE・医師への報告までで整理しています。
では、実際に記録係を任された瞬間、最初に何をすればいいのでしょうか。
急変時に記録係を任されたら、最初に確認すること
「記録を担当します」と声に出して、役割を確認する
最初にやることは、とてもシンプルです。記録係であることを、チームに伝えます。
「記録を担当します。実施した内容を教えてください」
この一言で、周囲は「情報はこの人に伝えればいい」と分かります。声をかける側も、迷わずに済みます。
記録しながら別の仕事も頼まれたら、どこまで担当できるかをリーダーと確認しましょう。途中で記録を交代するときは、どこまで残せているか、未確認のことは何かも一緒に伝えます。
記録用紙と「時計」を確認する
僕は時計を持っていなくて、時刻が分からず困ったことがあります。
紙とペンがあっても、出来事の時刻が分からなければ、経過は整理できません。記録係にとって、時刻は命綱のようなものです。
普段から、次の2つを確認しておくと準備になります。
・自部署の急変時記録用紙の場所
・対応する場所から見える時計の位置
対応中は、どの時計を基準にするかをチームで共有できると安心です。腕時計の使用が認められない部署もあるため、勤務先のルールに合った方法を確認してください。
記録する場所は、処置や物品の移動をじゃましない位置で、指示や実施報告が聞こえる場所を選びます。
途中から参加したときは、それまでの経過を聞く
自分が記録を始めた時刻と、患者さんの異変が見つかった時刻は、同じとは限りません。
途中から入ったときは、発見者やそれまで対応していた人に、次のことを確認します。
・何時ごろ、どのような状態で発見したか
・応援や医師への連絡は済んでいるか
・すでに実施した処置はあるか
あわせて、「自分が直接見たこと」と「ほかのスタッフから聞いたこと」を区別できるよう、情報提供者も確認しておきます。目の前の対応をじゃましないよう、聞く相手とタイミングはチームと調整しましょう。
準備が整ったら、次は「何を書くか」です。
急変時の記録係が押さえる記録項目
異変の発見時刻と、そのときの患者の状態
まず残すのは、「何がきっかけで急変対応が始まったのか」です。
患者さんの訴え、呼びかけへの反応、呼吸の様子、皮膚の状態、測定されたバイタルサイン。実際に確認された情報を記録します。
「状態が悪い」「いつもと違う」という言葉が聞こえたら、「何が変わったのか」を確認すると、記録が一気に具体的になります。
もう一つ、見落としやすい点があります。観察した時刻と、記録係がその情報を聞いた時刻は、ずれていることがあります。「今の値ですか? 少し前に測った値ですか?」と確かめる習慣をつけておくと安心です。
応援要請・医師への連絡と、到着時刻
応援を呼んだ時刻、連絡した相手、伝えた内容、受けた指示、医師や応援者が到着した時刻を整理します。
「医師へ報告した」だけでは、何を伝えて、どんな対応につながったのかが分かりません。重要な報告内容と、それに対する返答が追える形で残します。
報告の組み立て方は、【関連記事】看護師の医師への報告はどうする?SBARの伝え方と具体例を解説で解説しています。
指示内容と、実際に行われた処置・薬剤投与
ここは、記録するときに注意したいところです。
「指示が出たこと」と「実施されたこと」は、必ず分けて確認します。
たとえば、薬剤の準備を始めた時刻を、そのまま投与時刻として書いてしまうと、実際の経過とずれてしまいます。
薬剤については、次のような項目を、施設の様式に沿って確認します。
・名称、投与量、投与経路
・実際の投与時刻
・指示者、投与者
東京医科大学茨城医療センターの公開記載基準にも、薬剤の指示者、投与時刻、投与者などを残す項目があります。
聞き取れなかった名称や量を、状況から推測して書くのは避けましょう。分からないときは、聞きます。
対応後の患者の変化と、その後の引き継ぎ
処置が終わっても、記録は終わりではありません。処置のあとの観察結果も、大切な記録です。
たとえば「処置後に落ち着いた」と書くなら、何をもってそう判断したのかが分かるようにします。
・呼吸の様子
・本人の訴え
・再測定した値
担当の交代や病棟間の移動があった場合は、引き継いだ時刻、相手、患者さんの状態、継続して確認する内容も残します。
ここまでが「何を書くか」です。ただ、実際の現場では、分かっていても思うように動けない場面が出てきます。そんなときの対処法を見ていきましょう。
急変時の記録で困ったときの対応

会話が多くて、何を記録するか迷ったとき
僕が困ったことの一つは、いろいろな会話が飛び交う中で、記録に残す情報を選べなかったことです。
その会話は、指示なのか、確認なのか、これから行う予定の話なのか。慣れないうちは、その違いをつかむこと自体が難しいと感じました。
迷ったら、さきほどの早見表に戻ります。
・患者さんに何が起きたか
・どんな指示が出たか
・何が実施されたか
・その後どうなったか
この4つに当てはまる内容を残す、と考えると整理しやすくなります。
それでも曖昧なときは、短く聞き返します。
「今の内容は、実施する指示でよいですか?」
「その処置は、もう実施しましたか?」
「予定」なのか「指示」なのか「実施済み」なのか。この3つを区別するだけで、記録の迷いはかなり減ります。
指示や実施内容が聞き取れなかったとき
聞き取れなかったときは、次のような声かけをしています。
・「〜でよいですか?」
・「〜は投与しましたか?」
・「今、何をしましたか?」
分からない部分に合わせて質問を具体的にすると、相手も答えやすくなります。
| 確認したいこと | 声かけの例 |
|---|---|
| 指示の内容 | 「指示された薬剤名と量を、もう一度お願いします」 |
| 実施したかどうか | 「その薬剤は、もう投与しましたか?」 |
| 実施した時刻 | 「投与したのは何時何分ですか?」 |
| 実施した人 | 「実施したのは〇〇さんでよいですか?」 |
| 処置後の状態 | 「処置後の血圧は、今測定した値ですか?」 |
表の声かけは、実体験をもとに整理した確認例です。
薬剤名や量を復唱したときは、相手の返答まで確認してください。聞き間違えていた場合、その場で直してもらえるやり取りが必要です。
処置は進んでいるのに、情報が届かないとき
僕の経験では、お互いにオウム返しで確認し合う会話がなく、記録に必要な情報が共有されていないことがありました。
そこで大切にしたいのが、「伝えた」「受け取った」「内容が合っている」の3つを確かめるやり取りです。
たとえば、次のような流れです。
・実施者:「14時05分に採血しました」
・記録係:「14時05分、採血実施ですね」
・実施者:「はい」
これはやり取りを説明するための例ですが、受け取った内容を声に出すだけで、実施者も「ちゃんと伝わった」と確認できます。
処置が重なって記録が追いつかないときは、抱え込まずに「処置が重なり、記録が追いついていません」とリーダーへ伝えましょう。情報の整理や記録を補助してもらえます。
僕はチームダイナミクスの一つとして、お互いにコミュニケーションを取り、分からないことは聞くように伝えています。先輩看護師も、周囲を見て困っていそうな人がいれば声をかけ、サポートします。
時刻や内容を確認できず、記録が抜けたとき
抜けに気づいたら、実施者やその場にいた人、施設で確認できる記録などを手がかりに、事実を確かめます。
ここで絶対に避けたいのは、正確な時刻が分からないのに、それらしい時刻を作って埋めることです。何を確認できて、何が確認できなかったのかを、施設の記載基準に沿って扱います。
あとから追記・訂正するときは、元の記録との関係、記載した日時、記載者が分かるようにします。日本看護協会の指針では、訂正前の内容を確認できる形で残すことや、追記する箇所を明確にすることが示されています。
困ったときの動き方が分かったところで、実際の記録がどんな形になるのか、具体例で見ていきましょう。
急変時の記録例|紙のメモから経過を整理する

僕の勤務先では、急変時は紙にメモしている
普段は電子カルテを使っていますが、急変時は紙にメモのように書いています。
その場で時刻と行ったことを残しておくと、あとから電子カルテに整理するときの手がかりになるからです。
ただし、時刻と処置だけで記録が完成するわけではありません。患者さんの状態や反応、誰から得た情報かも確認し、実際の経過が伝わるように整理します。
電子カルテへの入力は施設の運用に従い、できるだけ速やかに行います。出来事が起こった日時と、入力した日時は区別します。
紙のメモにも患者情報が含まれます。保存・スキャン・廃棄などは、勤務先のルールに従ってください。
患者の状態変化から、医師到着までの記録例
以下は、記録の書き方を示すために作成した教育用の架空事例です。実際の患者さんの記録ではありません。発見から医師到着までの一部を取り上げており、治療手順や急変対応の全体を示すものではありません。
この例では、看護師Aが発見・観察、看護師Bが連絡、看護師Cが記録を担当しています。実際には、施設の様式に沿って記載者などを特定できるようにします。
| 時刻 | 記録例 |
|---|---|
| 14:00 | 看護師Aから報告。訪室時、患者より「急に息苦しくなった」と訴えあり。呼びかけに返答あり。看護師Aが応援を要請し、患者のそばで観察継続。 |
| 14:01 | 看護師Aから測定値の報告。呼吸数28回/分、SpO₂ 93%(室内気)、脈拍110回/分、血圧96/58mmHg。看護師Bが医師Dへ電話し、急な息苦しさの出現と上記測定値を報告、診察を依頼。医師Dより直ちに向かう旨の返答あり。 |
| 14:02 | 看護師Aが再評価。「息苦しさは変わらない」と患者の訴えあり。呼びかけに返答あり。呼吸数28回/分、SpO₂ 93%(室内気)、脈拍108回/分、血圧98/60mmHgと報告あり。 |
| 14:03 | 医師D到着。看護師Aが発見時からの経過と再評価結果を報告。医師Dが診察開始。 |
この例で見てほしいのは、次の3点が時刻とともに追えることです。
・誰から得た情報か
・患者さんがどう変化したか
・何を報告し、どんな返答があったか
診察後に処置や薬剤投与が行われた場合は、指示内容、実施時刻、実施者、その後の反応を続けて記録します。
心停止対応では、蘇生に関わる出来事も記録する
心停止対応では、施設の蘇生記録用紙に沿って、次のような出来事を整理します。
・心停止を認識した時刻と、確認された患者の状態
・胸骨圧迫の開始、交代、中断・再開
・確認された心電図波形、除細動の時刻と実施内容
・薬剤の名称・量・投与時刻など
・気道管理や換気に関する実施内容
・自己心拍再開を確認した時刻と、その後の状態
米国心臓協会(AHA)の記録用紙にも、胸骨圧迫開始時刻、波形、除細動、薬剤、処置への反応などの欄があります。
記録係は、患者さんの状態や処置を判断した人から情報を受け取って記録します。記録の確認によって、必要な救命処置を遅らせないことが前提です。
曖昧な表現を、確認できた事実に置き換える
最後に、書き方のコツを一つ。
「医師へ報告した」とだけ書くより、次のように書くほうが、経過を追いやすくなります。
14:01、看護師Bが医師Dへ電話。急な息苦しさの出現と、呼吸数28回/分、SpO₂ 93%(室内気)、脈拍110回/分、血圧96/58mmHgを報告し、診察を依頼。直ちに向かう旨の返答あり。
文章を長くすることが目的ではありません。必要な事実を、具体的に残すことが大切です。
急変時の記録係についてよくある質問
新人看護師でも記録係を担当してよい?
担当する場合は、本人の習熟度と周囲の支援体制を踏まえて役割を決めます。「書くだけだから簡単」と考えて、支援なしに任せるのは避けたいところです。
僕自身、いろいろな会話から必要な情報を選ぶことに難しさを感じました。だから新人には「分からなければ聞いていいよ」と伝え、先輩も困りごとを確認しながら支えています。
練習では、実際に部署で使う用紙を見ながら、先輩と次のことを確かめておくとよいと思います。
・何を聞いたら、どこに書くか
・聞き取れなければ、どう確認するか
急変時の記録はSOAPで書く?経時記録で書く?
施設で決められた様式に従います。日本看護協会の指針でも、記録の様式や方法は各施設で設定するとされています。
この記事では、出来事の順序を理解しやすいように、時刻ごとの表を使いました。SOAPを用いる場合も、状態変化と対応の時刻・順序が追えることが重要です。
記録係を置く余裕がないときはどうする?
必要な救命処置と応援要請が最優先です。人が集まった段階で、リーダーと役割を調整します。
記録担当が決まるまでに行ったことは、担当者へ引き継ぎます。その際、発見・処置を行った人が確認できる情報を伝え、不明な部分は不明なまま共有してください。あとから確認する場合も、出来事と記載の日時を区別し、施設のルールに従います。
まとめ|急変時の記録係は、時刻と事実を確認して残そう
急変時の記録係が押さえたいのは、次の5点です。
・記録用紙と、時刻を確認できる環境を準備する
・患者の状態、指示、実施内容、その後の反応を整理する
・指示されたことと、実施されたことを分けて確認する
・聞き取れないことは声をかけ、相手の返答まで確かめる
・記録が追いつかないときは、チームに支援を求める
僕も、何を残せばよいか迷い、必要な情報が記録係へ伝わらず、記録が抜けた経験があります。その経験から、記録係が質問することと、周囲が実施内容を伝えて支えることの、両方が大切だと考えるようになりました。
まずは、自部署の急変時記録用紙を確認してみてください。どこに何を書くのか、時刻は何で確認するのか、分からないときは誰に聞くのか。先輩と一緒に確かめておくことが、実際の場面への一番の準備になります。
対応全体も振り返りたい方は、【関連記事】急変時の看護師の対応|異変発見からABCDE・医師への報告までもあわせて読んでみてください。

記録係は、チームの「目」と「記憶」を預かる大切な役割です。迷ったら聞いていい。それが一番のコツです。次の急変で、あなたが一歩動けるように応援しています。


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