急変時の看護師の対応|異変発見からABCDE・医師への報告まで

救急現場のリアル

こんにちは、ハクです。

急変対応と聞くと、「ABCDEを覚えていれば何とかなる」「とにかく落ち着いて対応すればいい」といったイメージを持っている方も多いかもしれません。ただ実際の現場では、評価の知識だけでなく、異変に気づいてから応援を呼び、役割を分担し、医師へ報告し、記録に残すまでの一連の流れを把握しているかどうかで、動きの速さがまったく変わってきます。

僕は救命救急センターで10年以上、救急外来とICU・HCUの両方で急変対応にあたってきました。この記事では、その中で身についた「異変に気づいてから記録に残すまで」の全体の流れを、一つずつ整理してお伝えします。

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この記事を書いた人

ハク救急・ICU看護師

救命救急センター勤務歴10年以上の現役ナース。認定看護師として院内教育・急変対応研修や学生への講義講師も担当。現場のリアルな経験をもとに記事を書いています。

この記事でわかること

・急変対応の全体像を8つのステップで把握できる
・異変に気づいたときに最初に確認すべきこと
・応援要請で「誰に・どこへ・何を」伝えるべきか
・BLS判断とABCDEによる一次評価の進め方
・応援者が来たあとの役割分担の考え方
・SBARを使った医師への報告の仕方
・対応後の再評価と記録のポイント
・新人看護師が急変対応で迷いやすいポイント

ハク
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急変対応は、知識と流れの両方がそろって初めて落ち着いて動けるようになります。今日はその全体の流れを、順番に整理していきます。

  1. 急変時に看護師が行う対応の全体像
  2. 患者の異変に気づいたら、最初に行うこと
    1. 患者から離れず、第一印象で重症感を見る
    2. 「何かおかしい」の段階でも先輩やリーダーに相談する
    3. すべてのバイタルをそろえる前に応援を呼ぶ場面がある
  3. 応援要請では「誰に・どこへ・何を」を具体的に伝える
    1. 応援要請で最初に伝える内容
    2. 院内救急コール・RRSは施設の基準に従う
    3. 夜勤中や一人で発見したときの考え方
  4. 応援を呼びながら、初期評価を進める
    1. 反応と正常な呼吸がなければBLSを優先する
    2. 心停止でなければABCDEで生命危機を探す
    3. 異常を見つけたら、次へ進む前に対応して再確認する
  5. 応援者が来たら役割を分けて対応する
    1. 発見者は患者の変化とこれまでの対応を共有する
    2. リーダーを決めて指示系統を一本化する
    3. 観察・処置準備・連絡・記録を分担する
    4. 必要物品は患者の状態に合わせて準備する
  6. 医師にはSBARで「今の危険」と「依頼」を先に伝える
    1. 報告前に完璧な診断をつける必要はない
    2. 最初に患者・場所・現在の異常を伝える
    3. SBARで短く整理する
    4. 急変時の報告例
  7. 対応したらABCDEで再評価する
    1. 処置後に患者がどう変化したかを見る
    2. 状態が変わればAから見直す
    3. 改善しない・悪化する場合は追加の応援を要請する
    4. 医師到着後も継続して観察する
  8. 急変対応は時刻と患者の反応がわかるように記録する
    1. 急変時に記録する内容
    2. 口頭指示は復唱して記録する
    3. 可能なら記録担当を決める
  9. 急変対応で新人看護師が迷いやすいポイント
  10. 事例で見る、異変発見から記録までの流れ
  11. まとめ|急変時は一人で診断せず、応援要請と評価を並行する

急変時に看護師が行う対応の全体像

急変対応は、大きく分けて8つのステップで進みます。この順番を頭に入れておくだけで、実際に急変に遭遇したときの迷いがかなり減ります。

一つ一つの評価や報告の質を高める前に、まず全体の流れを知っておくことが大切だと僕は考えています。流れが見えていないと、目の前の処置に集中するあまり、応援要請や医師への報告が後回しになってしまうことがあるからです。

急変対応の流れは、次のとおりです。

・小さな異変に気づく
・患者さんのそばで第一印象を確認する
・患者さんのそばを離れず、応援を要請する
・反応と呼吸を確認し、必要ならBLSを開始する
・心停止でなければABCDEで一次評価を行う
・応援者が到着したら役割を分担する
・医師へSBARで報告する
・対応後にABCDEで再評価し、記録に残す

ここからは、それぞれのステップを一つずつ詳しく見ていきます。

患者の異変に気づいたら、最初に行うこと

患者さんの異変に気づいたら、まず声をかけながら全体の様子を見ます。最初に確認するのは、細かい検査結果やすべてのバイタルサインではありません。声かけへの反応や呼吸、顔色といった、その場で確認できる変化から重症感をつかむことが、初動としては大切だと考えています。

患者から離れず、第一印象で重症感を見る

確認するのは、次のような項目です。

・声かけに反応するか
・普段どおり会話できるか
・呼吸が明らかに苦しそうではないか
・顔色や表情に大きな変化がないか
・目立つ出血や嘔吐などがないか

声をかけながら反応や呼吸、顔色などを確認することで、明らかな異常や緊急性の高さに気づけることがあります。

ここで「明らかにおかしい」「一人で対応するのは危ない」と感じたら、患者さんから離れずに応援を呼びます。急変時は、血圧計や体温計を取りに行くことより、患者さんのそばで反応や呼吸を見続けることを優先する場面があるからです。必要な物品は、自分ですべて取りに行くのではなく、応援に来るスタッフへ依頼するようにしています。

「何かおかしい」の段階でも先輩やリーダーに相談する

急変かどうか、はっきり判断できないこともあります。患者さんは会話できていて、血圧も大きく下がっていない。しかし、いつもと比べて元気がなく、呼吸や表情が気になる。このような場面で、「もう少し様子を見てから相談しよう」と一人で抱え込む必要はありません。

状態悪化の初期では、すべての異常がそろっているとは限らないからです。自分だけでは判断できないときは、

・「いつもと様子が違います」
・「原因はわかりませんが、呼吸が気になります」
・「一度、一緒に見てもらえませんか」

と、先輩看護師やリーダーへ具体的に相談します。この段階では、正確な診断名を伝えることよりも「何が普段と違うのか」を共有することが大切です。「何かおかしい」と感じたこと自体が、患者さんをもう一度評価し、必要に応じて周囲へ相談するきっかけになります。

すべてのバイタルをそろえる前に応援を呼ぶ場面がある

急変時によく迷うのが、応援を呼ぶタイミングです。「血圧を測ってから」「SpO2を確認してから」「カルテを見て既往歴を調べてから」と情報をそろえているうちに、応援要請が遅れてしまうことがあります。

もちろん、バイタルサインや患者情報は重要です。ただ、明らかな意識状態の変化や呼吸の異常など、生命に関わる異常が疑われる場合は、すべての情報がそろうまで待ってから応援を呼ぶ必要はありません。ショックの初期兆候を見分ける視点は、ショックの種類と見分け方でも詳しく解説しています。

まず応援を要請し、その後に役割を分けて評価や情報収集を進めます。

・発見した看護師は患者さんのそばで観察を続ける
・応援者にモニターなど必要な物品の準備を依頼する
・必要に応じてリーダーや医師への連絡を依頼する

というように、複数人で並行して動きます。急変時は、一人ですべての情報を完成させてから次へ進むのではなく、必要な人を早めに集めながら評価を進めることが重要だと感じています。

応援要請では「誰に・どこへ・何を」を具体的に伝える

応援を呼ぶときに「ちょっと来てください」だけでは、患者さんの緊急度が十分に伝わらないことがあります。一方で、発見時の経過や既往歴を最初からすべて説明していると、応援要請そのものに時間がかかってしまいます。

最初の応援要請の目的は、状況を完全に報告することではなく、必要な人を早く集めることです。そのため、まず次の3つを具体的に伝えます。

・誰に来てほしいのか
・どこへ来てほしいのか
・何が起きているのか

余裕があれば、必要な人数や持ってきてほしい物品、連絡してほしい相手も伝えます。

応援要請で最初に伝える内容

応援要請は、短く、具体的に伝えます。たとえば、近くにいるスタッフには、

・「○号室の○○さんです。呼びかけへの反応が悪いです。応援をお願いします」

と伝えます。さらに役割を依頼できる状況なら、

・「○号室で患者さんの呼吸状態が悪化しています。リーダーへ連絡して、モニターを持ってきてください」

のように、何をしてほしいのかまで具体的に伝えます。応援要請に含めたい内容は、次のとおりです。

・患者さんの場所
・患者さんを特定できる情報
・現在起きている異常
・応援してほしいこと
・持ってきてほしい物品
・連絡してほしい相手

ただし、緊急性が高い場面で一度にすべてを伝える必要はありません。まず場所と緊急性を伝えます。

・「○号室です。患者さんの反応がありません。すぐに来てください」

これだけでも、単に「来てください」と伝えるより状況が明確になります。応援者が到着してから、発見時の状況や現在までに確認した内容を追加で共有します。応援要請と、その後の詳しい報告は分けて考えると、急変時にも整理しやすくなると思います。

院内救急コール・RRSは施設の基準に従う

急変時の連絡先や応援要請の方法は、施設によって異なります。たとえば、

・病棟リーダーや担当医へ連絡する
・院内救急コールを使用する
・RRSやMETを起動する
・救急カートやAEDを準備する

など、勤務先によって手順や役割が決められています。そのため、この記事ではRRSや院内救急コールの具体的な起動基準までは示しません。事業所や施設によって基準は異なるため、あくまで目安として参考にしてください。

大切なのは、急変が起きる前に自分の勤務先のルールを確認しておくことです。少なくとも、

・院内救急コールの番号・連絡方法
・RRSやMETの起動方法
・夜間・休日の連絡体制
・救急カートやAEDの場所
・医師への連絡方法

は、普段から確認しておくことをおすすめします。急変が起きてから初めてマニュアルを探すのではなく、普段から自分の病棟の連絡体制を把握しておくことが、実際の初動につながります。

夜勤中や一人で発見したときの考え方

夜勤中は、日勤帯よりスタッフが少なく、すぐ近くに応援を頼めないことがあります。そのような状況でも、一人で患者さんの評価や対応をすべて終わらせようとしないことが大切です。

ベッドサイドのナースコール、PHS、スタッフコールなど、その場で使用できる手段を使って応援を要請します。たとえば、

・「○号室の○○さんです。反応が悪く、呼吸もいつもと違います。すぐに来てください」

のように、まず場所と患者さんの状態を伝えます。電話で長い経過を説明するより、緊急性が高い場面では、まず必要な応援につなげることを優先します。

患者さんのそばを離れるかどうかは、患者さんの状態、周囲の環境、使用できる連絡手段などによって異なります。可能であれば患者さんのそばで観察を続けながら応援を要請し、その場から連絡できない場合は、所属施設の手順や連絡体制に従って行動するようにしています。

また、夜勤に入るときには、

・その日のリーダー
・スタッフの配置
・当直医への連絡方法
・院内救急コールやRRSの起動方法

を確認しておくと、急変時に「誰へ連絡すればいいのか」で迷いにくくなります。

応援を呼びながら、初期評価を進める

応援要請と並行して行うのが、患者さんの一次評価です。まず反応と呼吸の有無を確認し、心停止が疑われなければABCDEの流れで評価を進めます。

この順番を守る理由は、生命に直結する異常から優先的に見つけるためです。呼吸や循環に重大な異常があるのに、意識レベルや皮膚所見から評価を始めてしまうと、対応が遅れる危険があります。

反応と正常な呼吸がなければBLSを優先する

患者さんの反応がなく、正常な呼吸もない、または判断に迷う場合は、ABCDEの評価より先にBLSを優先します。院内救急コールやAEDの要請を同時に行いながら、胸骨圧迫を開始します。

反応の確認は、肩を軽く叩きながら大きな声で呼びかけて行います。呼吸の確認は、普段どおりの呼吸をしているかを短時間で見るだけで十分です。判断に迷うときは、呼吸がないものとして対応を進めるという考え方が、多くの現場で共有されています。

BLSの具体的な手順や優先順位は、施設のBLS研修や最新のガイドラインに沿って確認しておくことが前提になります。この記事では、急変対応全体の流れの中での位置づけとして紹介しています。

心停止でなければABCDEで生命危機を探す

心停止が疑われない場合は、ABCDEの順番で生命を脅かす異常がないか評価します。

  • A(Airway):気道
  • B(Breathing):呼吸
  • C(Circulation):循環
  • D(Disability):意識・神経
  • E(Exposure):全身

ここで重要なのは、A〜Eの観察項目をすべて覚えて順番にチェックすることではなく、生命に関わる異常を優先して探し、異常があればその場で必要な対応につなげることです。

ABCDEで具体的に何を観察するのかは、「ABCDEアプローチの観察項目と初期対応」で詳しく解説しています。

異常を見つけたら、次へ進む前に対応して再確認する

ABCDEで評価する際は、異常を見つけた時点でその項目に対応し、改善したかどうかを確認してから次の項目に進みます。

すべての項目を先に確認してから対応すると、生命に関わる異常への対応が遅れてしまうことがあるからです。ABCDEで生命を脅かす異常を見つけた場合は、すべての評価を終えてから対応するのではなく、その時点で必要な対応につなげます。

対応後は「処置をしたから終わり」ではなく、患者さんの状態がどう変化したかを確認してから評価を続けます。

実際に行う処置は、患者さんの状態や看護師が実施できる範囲、所属施設のマニュアル・包括指示などに従ってください。

一つの項目で異常が見つかったら、そこで立ち止まって対応し、落ち着いてから次の項目に進む。この流れを意識しておくと、評価が抜け漏れなく進みやすくなります。

応援者が来たら役割を分けて対応する

応援者が到着したら、そこから先は一人で抱え込む対応から、チームでの対応に切り替わります。

役割を明確に分けておく理由は、同じ作業が重複したり、逆に誰も対応していない項目が出てきたりするのを防ぐためです。人数が増えたのに動きが重なってしまうと、かえって対応が遅くなることもあります。

発見者は患者の変化とこれまでの対応を共有する

最初に患者さんを発見した看護師は、応援者が到着したタイミングで、それまでの経過を短く共有します。

・いつ、どんな異変に気づいたか
・第一印象で確認した内容
・すでに行った対応
・現在のABCDEの評価状況

をまとめて伝えることで、応援者もすぐに状況を把握できます。発見者はその後も、患者さんの状態変化を継続して観察する役割を担うことが多いです。

リーダーを決めて指示系統を一本化する

応援者が複数人になった場合は、早い段階でリーダー役を決めます。

指示系統が一本化されていないと、同じ指示が重複したり、誰の指示に従えばいいのか現場が混乱したりすることがあるからです。リーダーは、その場にいる医師や、経験のある看護師が担うことが一般的です。

リーダーが決まったら、他のスタッフはリーダーからの指示をもとに動き、気づいた変化はリーダーへ報告するという流れを意識します。

観察・処置準備・連絡・記録を分担する

役割は、大きく次のように分けられます。

・患者さんのそばで観察を続ける役割
・モニターや酸素、点滴など処置の準備をする役割
・医師やリーダーへ連絡する役割
・時刻や対応内容を記録する役割

人数が少ない場合は、一人が複数の役割を兼ねることもあります。その場合も、誰が何を担当しているのかをその場で簡単に共有しておくと、後から抜け漏れに気づきやすくなります。

必要物品は患者の状態に合わせて準備する

必要な物品は、あらかじめ決まった一式をすべてそろえるのではなく、患者さんの状態に合わせて優先順位をつけて準備します。

呼吸に異常があれば酸素関連の物品、循環に異常があれば点滴や輸液の準備というように、ABCDEの評価結果に沿って必要なものから届けるようにします。救急カートの配置や中身は施設によって異なるため、普段から自分の勤務先のカートの位置と中身を確認しておくことも大切です。

医師にはSBARで「今の危険」と「依頼」を先に伝える

応援要請と初期評価が進んだら、次は医師への報告です。医師への報告は、経過をすべて説明することより、今の危険な状態と依頼したいことを先に伝えることを優先します。

理由は、医師も限られた情報の中で早く判断する必要があるからです。詳しい経過は、危険な状態が伝わったあとで補足すれば十分な場面が多くあります。

報告前に完璧な診断をつける必要はない

医師へ報告する前に、原因や診断名を突き止めようとする必要はありません。看護師の役割は診断をつけることではなく、観察した事実を正確に伝えることだからです。

「何の病気かわからないので報告できない」と迷ってしまうと、報告そのものが遅れてしまいます。わかっている事実と、まだわかっていないことを分けて伝えるだけで、医師にとっては十分に判断材料になります。

最初に患者・場所・現在の異常を伝える

報告の冒頭では、まず患者さんの情報と現在の異常を簡潔に伝えます。

・患者さんの名前と場所
・現在起きている異常
・すでに行った対応

を先に伝えることで、医師はすぐに状況をイメージできます。詳しい既往歴や検査データは、このあとに続けて伝えれば十分です。

SBARで短く整理する

報告を整理する枠組みとして、SBARがよく使われます。

・S(Situation)何が起きているか
・B(Background)関連する背景情報
・A(Assessment)看護師としてのアセスメント
・R(Recommendation)依頼したいこと

この順番で整理すると、伝え漏れを防ぎながら、短時間で必要な情報を伝えられます。SBARはあくまで整理の枠組みなので、緊急性が高い場面では、S(何が起きているか)とR(依頼したいこと)を先に伝え、B・Aはそのあとで補足するという伝え方も現実的です。

急変時の報告例

たとえば、次のような伝え方になります。

・「○号室の○○さんです。呼びかけへの反応が悪く、呼吸が速くなっています(S)」
・「もともと肺炎で入院中の患者さんです(B)」
・「SpO2が低下していて、呼吸状態の悪化を疑っています(A)」
・「至急診察をお願いします。酸素投与の指示もいただけますか(R)」

すべてを一度に伝えられない状況では、まずSとRだけでも構いません。「反応が悪く、呼吸が速いです。至急来ていただけますか」だけでも、医師にとっては十分な情報になります。

対応したらABCDEで再評価する

処置や医師の指示への対応が終わったら、そこで終わりにせず、もう一度ABCDEで患者さんを評価し直します。

対応した内容が実際に効果を出しているかどうかは、再評価をしなければわからないからです。処置をして安心してしまい、その後の変化を見落としてしまうと、状態の悪化に気づくのが遅れることがあります。

処置後に患者がどう変化したかを見る

酸素投与や輸液など、何らかの対応をしたあとは、その処置によって患者さんの状態がどう変化したかを確認します。

呼吸数やSpO2、顔色、反応などが、処置の前と比べてどう変わったかを見ることが、次の判断につながります。数値だけでなく、患者さんの表情や訴えの変化も、あわせて確認するようにしています。

状態が変わればAから見直す

再評価は、必ずABCDEのAから順番に見直します。途中の項目だけを確認して終わらせないことが大切です。

一つの処置が、別の項目に影響を与えることもあるからです。たとえば呼吸の対応をしたことで、循環の状態が変化していることもあります。Aから順に見直すことで、新たに出てきた異常を見落としにくくなります。

改善しない・悪化する場合は追加の応援を要請する

再評価をしても状態が改善しない、あるいは悪化している場合は、ためらわずに追加の応援を要請します。

一度応援を呼んで対応が始まっていても、状況によってはさらに人手や医師の判断が必要になる場面があります。「もう応援を呼んだから」と抱え込まず、状態の変化に応じて再度声を上げることが、患者さんの安全につながります。

医師到着後も継続して観察する

医師が到着し、処置や指示が始まったあとも、看護師による観察は続きます。

医師は処置そのものに集中する場面が多いため、患者さんの全身状態の変化を継続して見る役割は、看護師が担うことが多いからです。バイタルサインの変化や、患者さんの反応の変化に気づいたら、その都度医師へ共有します。

急変対応は時刻と患者の反応がわかるように記録する

急変対応が落ち着いたら、対応の経過を記録に残します。記録は、あとから振り返るためだけでなく、その場にいなかったスタッフへ状況を正確に伝えるためにも必要です。

記録が曖昧だと、対応の妥当性や患者さんの変化の経過があとから追いにくくなります。時刻と患者さんの反応をセットで残しておくことが、記録の基本になります。

急変時に記録する内容

記録しておきたい内容は、次のとおりです。

・異変に気づいた時刻と内容
・応援要請を行った時刻
・実施した観察・処置とその時刻
・処置に対する患者さんの反応
・医師への報告内容と指示内容
・医師が到着した時刻

すべてをリアルタイムで細かく書き残すのが難しい場面もあるため、対応中はメモ程度でも構いません。落ち着いたタイミングで、記憶が新しいうちに正式な記録として整理します。

口頭指示は復唱して記録する

急変時は、口頭での指示を受けることが多くなります。口頭指示は、その場で復唱して内容を確認し、記録にも残しておきます。

聞き間違いや思い込みによる誤りを防ぐためです。「○○を○ml投与、で間違いないですか」のように復唱してから対応し、誰がいつ指示を出したのかも記録に残すようにしています。

可能なら記録担当を決める

人手に余裕がある場面では、観察や処置とは別に、記録専任のスタッフを配置できると理想的です。

処置をしながら同時に細かく記録するのは負担が大きく、記録が抜けてしまうこともあるからです。記録担当がいれば、時刻や指示内容をその場でリアルタイムに残しやすくなります。人手が足りない場合は、対応が落ち着いた時点でチーム全体で経過を振り返り、記録を補い合うようにしています。

急変対応で新人看護師が迷いやすいポイント

急変対応に慣れないうちは、いくつか共通して迷いやすいポイントがあります。あらかじめ知っておくだけで、実際の場面での戸惑いが減ります。

これらのポイントに共通しているのは、「完璧に情報をそろえてから動こう」とすることで、かえって対応が遅れてしまうという点です。

・バイタルを全部測ってから呼ぼうとする
 異常に気づいた時点で応援を呼んでよく、すべてのバイタルがそろうのを待つ必要はありません。
・一人で何とかしようとする
 判断に迷う段階でも、先輩やリーダーに相談してよい場面です。抱え込まないことが、結果的に患者さんの安全につながります。
・病名を当てようとする
 看護師の役割は診断をつけることではなく、観察した事実を正確に伝えることです。
・医師への報告が長くなる
 経過をすべて説明するより、今の危険な状態と依頼したいことを先に伝えることを意識します。
・処置後の再評価を忘れる
 対応して終わりにせず、必ずABCDEで再評価し、状態の変化を確認します。

こうした迷いは、経験を重ねる中で少しずつ減っていくものです。今、迷いやすいと感じているとしても、それ自体は珍しいことではありません。

事例で見る、異変発見から記録までの流れ

ここまでの流れを、一つの事例を通して確認してみます。あくまで一例であり、実際の対応は患者さんの状態や施設の基準によって異なります。

肺炎で入院中の患者さん(○○さん)の病室を訪室したところ、普段より反応が鈍く、呼吸が速いことに気づきました。声をかけると返事はありましたが、いつもよりぼんやりした様子です。

その場で第一印象を確認すると、呼吸が明らかに速く、顔色もやや悪いように見えました。患者さんのそばを離れず、ナースコールで近くのスタッフに応援を要請しました。「○号室の○○さんです。呼吸が速く、反応も鈍いです。応援をお願いします」と、場所と状況を短く伝えます。

反応があり、正常な呼吸も確認できたため、ABCDEの順番で評価を進めました。Aは開通、Bで呼吸数の増加とSpO2の低下を確認、Cで頻脈を確認しました。Bで呼吸数の増加とSpO2の低下を確認しました。Bの異常に対して、所属施設の手順や指示に沿って必要な対応を行い、SpO2の変化を確認してから次の評価に進みました。

応援に来たスタッフとリーダーを決め、一人はモニター装着と記録、もう一人は医師への連絡を担当しました。医師への報告は、SBARの流れで「呼吸が速くSpO2が低下していること(S)」「もともと肺炎で入院中であること(B)」「呼吸状態の悪化を疑っていること(A)」「至急診察と指示をお願いしたいこと(R)」を伝えました。

医師が到着し、追加の指示のもとで対応を続けたところ、SpO2は改善傾向となりました。対応後は再度ABCDEで評価し、状態が落ち着いていることを確認したうえで、時刻と対応内容、患者さんの反応を記録に残しました。

このように、異変発見から記録までは一つの連続した流れとしてつながっています。どこか一つの評価だけを完璧にしようとするより、この流れ全体を意識しておくことが、実際の対応の落ち着きにつながると感じています。

まとめ|急変時は一人で診断せず、応援要請と評価を並行する

急変対応は、異変に気づいた瞬間から、応援要請、初期評価、役割分担、医師への報告、再評価、記録まで、一つの流れとしてつながっています。どこか一部分だけを完璧にこなそうとするより、この流れ全体を意識しておくことが、実際の現場での落ち着きにつながります。

僕自身、経験を積んだ今でも「一人で診断をつけよう」とはせず、応援要請と評価を並行して進めることを意識しています。判断に自信が持てないことより、一人で抱え込むことのほうがリスクになりやすいと感じているからです。

こうした対応力は、施設の教育体制や先輩のフォロー体制によっても身につきやすさが変わってきます。もし今の職場で相談しづらい雰囲気があったり、教育体制に不安を感じているなら、それは働く環境そのものを見直すサインかもしれません。看護師の転職完全ガイドでは、環境選びの視点も含めてまとめています。

ハク
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急変対応は、知識だけでなく流れを知っているかどうかで、動きの速さが変わってきます。この記事が、少しでも現場での安心材料になれば嬉しいです。

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