看護師の医師への報告はどうする?SBARの伝え方と具体例を解説

救急現場のリアル

こんにちは、ハクです。

新人のころ、医師へ電話をして、「まとまったら、もう一回電話して」と言われたことがあります。

当時、担当していた患者さんに食前の血糖測定を行ったところ、低血糖でした。その患者さんはこれから食事をする予定で、低血糖時には糖液を静脈注射する指示が出ていました。

僕が確認したかったのは、

「これから食事をするので、指示されている糖液は使わずに食事をして、食後に血糖を再測定してよいのか。それとも指示どおり糖液を投与した方がよいのか」ということです。

聞きたいことは自分の中で決まっていました。

ところが、いざ電話すると何から話せばよいのか分からなくなりました。患者さんの背景や経過を説明しているうちに話がまとまらなくなり、本当に確認したかったことまでたどり着けませんでした。

その結果が、「まとまったら、もう一回電話して」でした。

今振り返ると、何を判断してほしい電話なのかが、医師に伝わっていなかったのだと思います。

自分では聞きたいことが分かっていても、相手に伝わる形に整理できていなければ、必要な情報はうまく伝わりません。新人時代の僕にとって、それを痛感した出来事でした。

今なら、同じ場面でも「現在の状況」と「確認したいこと」を先に伝えます。

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この記事を書いた人

ハク救急・ICU看護師

救命救急センター勤務歴10年以上の現役ナース。認定看護師として院内教育・急変対応研修や学生への講義講師も担当。現場のリアルな経験をもとに記事を書いています。

この記事では、看護師が医師へ報告するときに何を整理すればよいのかを、SBARの考え方と実際の報告例を交えて解説します。

急変対応全体ではなく、今回は「医師への報告そのもの」に絞ってお話しします。

この記事でわかること
  • 医師への報告で最初に伝えたいこと
  • SBARを医師への報告でどう使うか
  • 緊急時のSBARの考え方
  • 報告前に確認しておきたい情報
  • 分からないことを聞かれたときの対応
  • 患者さんを知っている医師・知らない医師への伝え方の違い
  • SpO2低下・血圧低下・意識変化・発熱の報告例
ハク
ハク

僕も新人のころは、医師への電話が得意ではありませんでした。上手に話すことよりも、「電話をする前に何を整理するか」を意識すると報告しやすくなります。

結論|医師への報告は「今の状況」と「確認したいこと」を先に伝える

僕が医師への報告でまず意識しているのは、

「今、何が起きているのか」と、「何を確認・依頼したいのか」の2つです。

報告だからといって、患者さんの情報を最初からすべて説明する必要はありません。

例えば、肺炎で入院している患者さんのSpO2が低下した場面を考えてみます。

背景から話すと、

「○○さんは○日に肺炎で入院されて、抗菌薬を使っていて、昨日までは酸素も使っていなかったんですが……」

となります。

一方、現在の問題から伝えるなら、

「○○さんのSpO2が88%まで低下しています。呼吸苦もあるため、診察をお願いします」

となります。

後者なら、電話の最初に何が起きていて、なぜ連絡しているのかが伝わります。

そのあとに、「肺炎で入院中です」「夕方から徐々にSpO2が下がっています」など、判断に必要な背景を加えれば十分です。

医師への報告は、情報量を増やすことより、必要な情報を必要な順番で伝えることが大切です。

医師への報告でつまずきやすい3つのポイント

新人のころの僕自身の経験や、後輩の報告を聞いていると、つまずきやすいポイントには共通する部分があります。

何を伝えればいいのか分からない

患者さんについて知っている情報はたくさんあります。

バイタルサイン、既往歴、入院経過、検査結果、点滴、内服など、どれも大切に見えます。

そのため、「どこから話せばいいんだろう」と迷い、思いついた情報から順番に説明してしまうことがあります。

冒頭で紹介した低血糖の報告も、まさにこの状態でした。

必要なのは情報を増やすことではなく、まず「今回の電話で一番伝えたいことは何か」を決めることです。

医師から質問されると焦る

報告すると、

「血圧は?」「尿量は?」「点滴は何が入っている?」など、追加で質問されることがあります。

確認していないことを聞かれると、「そこまで見ていなかった」と焦るかもしれません。ただ、すべての情報を確認してからでなければ電話できないわけではありません。

緊急性が高ければ、確認できている情報でまず報告し、不足している情報はあとから確認します。

自分のアセスメントに自信がない

SBARにはA(Assessment)があります。

ここで、「診断名を言わないといけないの?」と迷うことがあります。しかし、看護師が病名を確定する必要はありません。

例えば、

「呼吸状態が悪化していると考えています」

「循環状態の悪化が心配です」

「普段と比べて意識状態が悪くなっています」

と、自分が観察した事実から、患者さんの状態をどう見ているかを伝えれば十分です。

SBARとは?医師への報告を4つに分けて整理する

SBARは、

  • S:Situation
  • B:Background
  • A:Assessment
  • R:Recommendation

の4つに情報を分けて整理する方法です。

SBARの順番を暗記することよりも、それぞれに何を入れるのかを理解しておく方が実際の報告では役立ちます。

SBARの4要素を一目で理解できる図解

S|今、何が起きているか

S(Situation)は、現在の問題です。

電話では、所属や名前、患者さんを特定できる情報を伝えたあと、

「SpO2が88%まで低下しています」

「血圧が85mmHgまで低下しています」

「普段より反応が悪くなっています」

など、今回一番伝えたい変化を早めに伝えます。

「この電話は何についての報告なのか」が最初に分かることが大切です。

B|判断に必要な背景

B(Background)は、今起きている問題を判断するために必要な背景です。

例えば、

「肺炎で入院中です」

「昨日手術を受けています」

といった情報です。

ここで既往歴をすべて説明する必要はありません。今の問題と関係がある背景に絞ると、報告がまとまりやすくなります。

A|自分はどう評価しているか

A(Assessment)は、現在の状態をどう評価しているかです。

例えば、

「呼吸状態が悪化していると考えています」

「循環状態の悪化が心配です」

「普段より意識状態が悪いです」

と伝えます。

診断名を当てることではなく、観察した事実から何が問題だと考えているのかを一言添えるイメージです。

R|何をしてほしいのか

R(Recommendation)は、医師へ依頼・確認したいことです。

例えば、

「診察をお願いします」

「対応について指示をお願いします」

「至急来ていただけますか」

などです。

Rは、看護師が治療方針を決めるという意味ではありません。

医師に何を判断・対応してほしいのかを明確にする部分と考えると分かりやすいと思います。

緊急時はSBARの順番にこだわりすぎない

SBARを覚えると、

「S→B→A→Rの順番で話さないといけない」

と思ってしまうことがあります。

しかし、実際の緊急場面では、僕も毎回きれいにS→B→A→Rと話しているわけではありません。

例えば血圧が急に低下した場面なら、

「○○さんの血圧が急に下がっています。現在85mmHgです。何か指示ありますか?」

と、現在の異常と確認したいことを先に伝えることがあります。

できるだけ具体的に依頼できる場面なら、

「血圧が急に低下しています。診察をお願いします」

と伝える方が、目的はさらに分かりやすくなります。

SBARは、順番どおり話せたかを確認するテストではありません。

必要な情報を整理し、相手へ伝えるための枠組みとして使う方が、実際の現場では使いやすいと感じています。

医師へ報告する前に僕が確認していること

報告前に確認する内容は、患者さんの状態によって変わります。

僕がよく確認するのは、

  • 血圧
  • 心拍数
  • SpO2
  • 体温
  • 尿量
  • 現在の点滴内容
  • 点滴の流量

などです。

ただし、これらを毎回すべて確認するわけではありません。

例えば低血糖なら、現在の血糖値だけでなく、それまでの血糖値の推移も確認します。

血圧が低下している場面なら、現在の血圧だけでなく、普段の血圧、心拍数、尿量、点滴内容などを確認しておくことがあります。

大切なのは、チェックリストを全部埋めることではありません。今起きている問題について、医師が判断するために何が必要かを考えることです。

また、緊急性が高い場合は、情報がすべてそろうまで報告を待ちません。まず現在の異常を伝え、必要な情報は並行して確認します。

分からないことを聞かれたら推測せず確認する

医師から、自分がまだ確認していないことを聞かれることもあります。

その場ですぐ確認できるなら、

「確認するので、少し待ってください」

と伝えます。

すぐに確認できない場合は、

「確認して、折り返し連絡します」

と伝えます。

分からない情報を無理に推測して答える必要はありません。大切なのは、分かっていることと、まだ分かっていないことを分けて伝えることです。

確認して折り返すと伝えた場合は、確認後に改めて連絡します。

相手の医師によって背景情報の量を変える

僕が現在、医師への報告で特に意識しているのが、「相手がこの患者さんをどのくらい知っているか」です。

同じ患者さんについて報告しても、相手によって必要な背景情報は変わります。

主治医 vs 当直医

患者さんをよく知っている医師

主治医など、患者さんの病状や治療経過をすでに把握している医師なら、背景を長く説明する必要はありません。

例えば、

「○○さんですが、午後からSpO2が下がっていて、現在88%です。午前中は95%前後でした。呼吸数も増えています。診察をお願いします」

と、今起きている変化を中心に伝えます。

患者さんをあまり知らない医師

一方、当直医など患者さんを詳しく知らない医師へ報告する場合は、背景を少し加えます。

例えば、

「○○さんです。肺炎で入院中の患者さんで、SpO2が88%まで低下しています。夕方から徐々に下がっていて、現在は呼吸数30回/分、呼吸苦もあります。診察をお願いします」

という形です。

僕は特に、

何の疾患で入院しているのか

今回の変化が急なのか、徐々になのか

を意識して伝えています。

SBARのB(Background)は、毎回同じ量を話すものではありません。

誰に報告するかによって背景の量を調整することも、伝わりやすい報告につながります。

医師へのSBAR報告例

ここからは、具体的な場面で報告例を見ていきます。

数値や状況は説明のための例です。実際には患者さんの状態や施設の手順に合わせてください。

SpO2が低下した場合

「○号室の○○さんです。SpO2が88%まで低下しています。肺炎で入院中で、現在呼吸数30回/分、呼吸苦もあります。呼吸状態が悪化していると考えています。診察をお願いします」

この例では、

  • S:SpO2低下
  • B:肺炎で入院中
  • A:呼吸状態が悪化している
  • R:診察をお願いしたい

と整理できます。

酸素投与中であれば、現在の投与方法や流量など、判断に必要な情報も追加します。

血圧が低下した場合

「○号室の○○さんです。術後1日目の患者さんで、血圧が85mmHgまで低下しています。普段は収縮期血圧120mmHg前後です。脈拍も110回/分まで上がっていて、尿量も減っています。循環状態の悪化が心配です。診察をお願いします」

ここでは、現在の血圧だけでなく、普段と比べてどう変化したかも伝えています。

同じ85mmHgでも、普段の血圧によって意味合いは変わるため、変化として伝えることを意識します。

意識状態が変化した場合

「○号室の○○さんです。先ほどから意識状態がいつもと違います。普段は名前を呼ぶと開眼して会話できますが、現在は呼びかけへの反応が鈍く、話もかみ合いません。普段より意識状態が悪化していると考えています。診察をお願いします」

意識状態の変化では、原因を無理に推測するより、普段と比べて何が変わったのかを伝えます。

施設でJCSやGCSなどを使用している場合は、その評価も必要に応じて加えます。

発熱した場合

「○号室の○○さんです。術後3日目で、38.0℃の発熱があります。血圧やSpO2、意識状態に大きな変化はありません。現在のところ全身状態に大きな変化はないと考えています。発熱について今後の対応を確認したいです」

発熱だけを報告するのではなく、必要に応じて他のバイタルサインや全身状態も添えます。

新人看護師の報告で「もったいない」と感じること

新人看護師の報告を聞いていると、患者さんの状態はしっかり見られているのに、伝える順番や情報のまとめ方で、少し分かりにくくなってしまうことがあります。

内容そのものが間違っているというより、伝え方を少し変えるだけで、もっと相手に伝わりやすくなる場面があります。

背景の説明が長くなる

既往歴や入院経過から丁寧に説明しようとして、背景が長くなってしまうことがあります。情報そのものが間違っているわけではありません。

ただ、現在の問題が後ろに回ると、聞く側は何についての電話なのか分かりにくくなります。背景を全部削るのではなく、今回の判断に関係する情報だけに絞ることが大切です。

今の状況が後ろに回る

報告では、

「今、何が起きているのか」

を早めに伝える方が、そのあとの背景も理解してもらいやすくなります。同じ内容でも、順番を変えるだけで伝わり方は大きく変わります。

指示を確認せず電話を終えてしまう

もう一つ、ときどき見かけるのが、患者さんの状態を説明したところで電話を終えてしまうケースです。

電話を切ったあとに、「結局、何をすればいいんだろう?」となり、もう一度医師へ電話することがあります。

そのため僕は、「現在の状況を短く伝える」「最後に必要な指示や依頼を確認する」この2点を特に意識するとよいと考えています。

新人時代の低血糖報告を今ならどう伝えるか

冒頭で紹介した低血糖の場面を、今の僕ならどう伝えるか考えてみます。

新人のころは、確認したいことは分かっていたのに、その内容を整理できず、医師へうまく伝えられませんでした。

今なら、

「○○さんなんですが、低血糖がありました。これから食事予定です。指示の糖液は投与せずに食事をして、食後に血糖を再測定してよいか、それとも指示どおり糖液を投与した方がよいか確認したいです」

と伝えます。

この報告では、

今起きていること:低血糖

これから起きること:食事予定

確認したいこと:糖液をどうするか

が整理されています。

電話をする前には、現在の血糖値だけでなく、それまでの血糖値の推移も確認しておきます。

ここで伝えたいのは、糖液を投与するかどうかの正解ではありません。治療については医師の指示や施設の手順に従います。

新人時代と今で違うのは、電話をする前に「何を判断してほしいのか」を自分の中で整理できていることです。

知識が増えたこともありますが、それ以上に「どう伝えるか」を考えるようになったことが大きいと感じています。

急変時は医師への報告と応援要請・ABCDEを並行する

患者さんの状態が急激に悪化している場合は、医師への報告だけに集中するのではなく、応援要請や患者評価を並行して進めます。

報告に意識が向きすぎて観察が止まったり、逆に評価を続けるあまり報告が遅れたりしないよう、必要に応じて役割を分担します。

この記事では急変対応全体には踏み込みません。

【関連記事】急変時の看護師の対応|異変発見からABCDE・医師への報告まで

ABCDEの具体的な観察・評価についてはこちらです。

【関連記事】ABCDEアプローチ(ABCDE評価)とは?救急看護の一次評価を図解で解説

医師への報告前に使えるSBARチェックリスト

電話をする前に迷ったら、次の項目を確認してみてください。

S|Situation

  • 誰のことか
  • 今、何が起きているか
  • どのくらい緊急なのか

B|Background

  • 今回の問題に関係する病名・治療
  • 今回の変化が急なのか、徐々なのか
  • 相手の医師が患者さんをどこまで知っているか

A|Assessment

  • 現在のバイタルサイン
  • 普段と比べてどう変わったか
  • 自分は何が問題だと考えているか

R|Recommendation

  • 診察してほしいのか
  • 指示を確認したいのか
  • すぐに来てほしいのか

すべてを埋める必要はありません。

迷ったら、「今、何が起きている?」「何を確認・依頼したい?」の2つに戻って考えてみてください。

電話前30秒チェックの図解

まとめ|SBARは「きれいに話すため」ではなく「必要な情報を伝えるため」に使う

医師への報告で大切なのは、患者さんの情報をすべて説明することではありません。

医師が判断するために必要な情報を、分かりやすく伝えることです。

そのためにSBARを使います。

ポイントは、

  • 今の状況を早めに伝える
  • 背景は必要なものに絞る
  • 自分がどう評価しているかを一言添える
  • 何を確認・依頼したいかを伝える
  • 相手が患者さんをどこまで知っているかで背景量を変える
  • 分からないことは推測せず確認する
  • 電話を切る前に必要な指示を確認する

ことです。

新人のころの僕は、医師へ何を聞きたいのか自分では分かっているのに、それを相手へ伝わる形に整理できませんでした。

今ならまず、

「今、何が起きているのか」

「何を確認したいのか」

を考えてから電話します。

SBARの型に自分を合わせるのではなく、患者さんの状態と相手に合わせてSBARを使う。それが、僕が実際に医師への報告を繰り返す中で身につけてきた考え方です。

ハク
ハク

次に医師へ電話するときは、電話をかける前に「今、何が起きている?」「何を確認したい?」を一度だけ頭の中で言ってみてください。それだけでも、報告はかなり整理しやすくなります。

参考
・Institute for Healthcare Improvement(IHI):SBAR Tool: Situation-Background-Assessment-Recommendation
・Agency for Healthcare Research and Quality(AHRQ):TeamSTEPPS「Tool: SBAR」

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