昇圧剤の種類と使い分け【現役救急ナースが解説】ノルアド・ドパミン・アドレナリンの違いとは |

昇圧剤の種類と使い分け【現役救急ナースが解説】ノルアド・ドパミン・アドレナリンの違いとは

救急現場のリアル

こんにちは、ハクです。

「昇圧剤が入った。でも何をどう観察すればいいかわからない」という経験はありませんか。

救急外来では昇圧剤を使う場面が頻繁にあります。ノルアドレナリン・ドパミン・アドレナリンは名前を聞いたことがあっても、どう違うのか・なぜその薬を選ぶのかがわかると、観察の精度が大きく変わります。

この記事では、救急現場で使われる代表的な昇圧剤3種類の特徴と使い分け、投与中の観察ポイントを現場目線で解説します。

ハクのプロフィール画像

この記事を書いた人

ハク救急・ICU看護師

救命救急センター勤務歴10年以上の現役ナース。認定看護師として院内教育・急変対応研修や学生への講義講師も担当。現場のリアルな経験をもとに記事を書いています。

この記事でわかること

昇圧剤を使う目的・ノルアドレナリン・ドパミン・アドレナリンの違いと使い分け・投与中に看護師が観察すべきポイント

ハク
ハク

昇圧剤の仕組みを理解しておくと、「血圧が上がらない」「脈が速くなってきた」というときに、医師への報告がより的確になります。「何が起きているか」がわかると、動き方が変わります。

結論:昇圧剤は「どの受容体に働くか」で使い分ける

昇圧剤を使う目的は、ショックなどで低下した血圧を上げて、全身の臓器に酸素を届けることです。

代表的な3種類の特徴をひと言でまとめると以下のとおりです。

・ノルアドレナリン:血管を締める・敗血症性ショックの第一選択
・ドパミン:心臓も血管も両方に作用・用量によって効果が変わる
・アドレナリン:心臓への作用が最も強い・心停止・アナフィラキシーに使う

それぞれ受容体への作用が違うため、ショックの種類や患者さんの状態によって選ばれる薬が変わります。ショックの種類については別記事で解説しています。

ショックの種類と見分け方【救急看護師が現場目線で解説】
ショックの4つの種類と見分け方を現役救急看護師が解説。出血性・心原性・分布異常性・閉塞性ショックの特徴と現場での対応ポイントをお伝えします。

昇圧剤が作用する受容体とは

昇圧剤を理解するために、まず受容体の基本を押さえておきます。

・α1受容体:血管を収縮させる→血圧が上がる
・β1受容体:心臓の収縮力を上げる・心拍数を上げる
・β2受容体:気管支を広げる・血管を拡張させる
・DA受容体(ドパミン受容体):腎臓・腸間膜の血管を広げる

昇圧剤はこれらの受容体に選択的、または複合的に働きます。どの受容体にどう作用するかが、薬の使い分けのカギです。

ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)

主な作用

α1受容体への作用が強く、血管を強力に収縮させて血圧を上げます。β1への作用も少しありますが、メインは血管収縮です。

使われる場面

敗血症性ショックの第一選択薬です。敗血症では血管が過剰に拡張して血圧が下がるため、血管を締めるノルアドレナリンが有効です。

分布異常性ショック全般(敗血症・神経原性)でも使われます。

投与中の観察ポイント

・血圧・MAP(平均動脈圧)の変化:目標MAPは65mmHg以上が目安
・末梢の冷感・チアノーゼ:血管収縮が強すぎると末梢循環が悪化する
・尿量:腎灌流の指標として1時間あたり0.5mL/kg以上を目安に確認
・刺入部の発赤・腫脹:血管外漏出すると組織壊死のリスクがあるため中心静脈から投与が原則

ドパミン

主な作用

用量によって作用する受容体が変わる点が最大の特徴です。

・低用量(1〜3μg/kg/分):DA受容体→腎・腸間膜血流を増加
・中用量(3〜10μg/kg/分):β1受容体→心収縮力・心拍数を増加
・高用量(10μg/kg/分以上):α1受容体→血管収縮・血圧上昇

使われる場面

心原性ショックや、心収縮力の低下が主な原因の血圧低下に使われます。以前は低用量で腎保護目的にも使われていましたが、現在はその有効性は否定されています。

近年は敗血症性ショックにはノルアドレナリンが優先されることが多く、ドパミンの使用頻度は以前より減っています。

投与中の観察ポイント

・心拍数・心電図モニター:頻脈・不整脈が出やすいため注意
・血圧の変化:用量調整で効果が変わるため、投与量と血圧の関係を意識する
・尿量:腎血流への影響を確認

アドレナリン(エピネフリン)

主な作用

α1・β1・β2すべての受容体に強く作用します。心臓への作用が最も強く、心収縮力・心拍数を強力に上げます。

使われる場面

心停止時の蘇生(ACLS)とアナフィラキシーショックが代表的な適応です。

・心停止:静注または骨髄内投与
・アナフィラキシー:筋肉注射(大腿前外側)が第一選択

アナフィラキシーについてはショックの記事でも触れています。

ショックの種類と見分け方【救急看護師が現場目線で解説】
ショックの4つの種類と見分け方を現役救急看護師が解説。出血性・心原性・分布異常性・閉塞性ショックの特徴と現場での対応ポイントをお伝えします。

投与中の観察ポイント

・心拍数・不整脈:β1作用が強いため頻脈・心室性不整脈に注意
・血圧:急激な上昇に注意
・心停止時はACLSプロトコルに沿って2サイクルごとに投与タイミングを確認

3種類の比較まとめ

受容体への作用

・ノルアドレナリン:α1(強)・β1(弱)
・ドパミン:DA・β1・α1(用量依存)
・アドレナリン:α1・β1・β2(すべて強)

主な使用場面

・ノルアドレナリン:敗血症性ショック・分布異常性ショック
・ドパミン:心原性ショック・心収縮力低下
・アドレナリン:心停止・アナフィラキシーショック

特に注意する副作用

・ノルアドレナリン:末梢循環不全・血管外漏出による組織壊死
・ドパミン:頻脈・不整脈
・アドレナリン:頻脈・心室性不整脈・急激な血圧上昇

昇圧剤投与中に看護師が共通して確認すること

薬剤の種類にかかわらず、昇圧剤投与中は以下を継続的に確認します。

バイタルサインの変化

血圧・心拍数・SpO2・呼吸数を継続モニタリングします。目標値(MAPや収縮期血圧)を医師と共有しておくと、報告の判断がしやすくなります。

尿量

臓器灌流の指標として最も使いやすいのが尿量です。0.5mL/kg/時を下回る場合は報告を検討します。

末梢循環

四肢の冷感・チアノーゼ・毛細血管再充填時間(CRT)を確認します。血管収縮系の薬剤では末梢循環が悪化しやすいです。

ルートの確認

昇圧剤は原則として中心静脈カテーテルから投与します。末梢静脈から投与する場合は、漏出がないか刺入部を頻繁に確認します。

投与ルートの単独確保

他の薬剤と混注しないよう、昇圧剤専用のルートを確保することが基本です。フラッシュによる急激な血中濃度上昇を防ぐためでもあります。

ABCDアセスメントの考え方については別記事でまとめています。

まとめ

・昇圧剤はどの受容体に働くかで使い分ける
・ノルアドレナリンは血管収縮が主な作用で敗血症性ショックの第一選択
・ドパミンは用量で作用が変わる・心原性ショックに使われることが多い
・アドレナリンは心臓への作用が最も強く心停止・アナフィラキシーに使う
・投与中はバイタル・尿量・末梢循環・ルートの状態を継続確認する

・昇圧剤はどの受容体に働くかで使い分ける
・ノルアドレナリンは血管収縮が主な作用で敗血症性ショックの第一選択
・ドパミンは用量で作用が変わる・心原性ショックに使われることが多い
・アドレナリンは心臓への作用が最も強く心停止・アナフィラキシーに使う
・投与中はバイタル・尿量・末梢循環・ルートの状態を継続確認する

昇圧剤の仕組みを知ると、「なぜこの薬が選ばれているのか」が見えてきます。そうなると観察の意味が変わり、異変への気づきが早くなります。現場での経験と組み合わせながら、少しずつ自分のものにしていってください。

ハク
ハク

昇圧剤が入っている患者さんは全身状態が不安定です。数字の変化を追うだけでなく、「患者さんが今どういう状態にあるか」を考えながら観察する習慣が、救急看護師としての力になります。


コメント

タイトルとURLをコピーしました