こんにちは、ハクです。
「昇圧剤が始まった。でも何を観察したらいいのか分からない」
新人の頃は、モニターの血圧を追うだけで精一杯になることがあります。
救急外来やICUでは、ノルアドレナリン・ドパミン・アドレナリンなどの血管作動薬を使う場面があります。
大切なのは薬剤名を暗記することではなく、「なぜこの患者さんに、この薬が選ばれているのか」を考えることです。
同じ血圧低下でも、血管が拡張しているのか、心臓から血液を送り出せていないのか、循環血液量が不足しているのかによって考え方は変わります。
この記事では、代表的な昇圧薬の作用と使い分け、投与中に看護師が確認したいポイントを整理します。
※実際の薬剤選択、濃度、投与速度、目標血圧などは患者さんの病態や医師の指示、施設の手順に従ってください。
・昇圧剤を使う目的
・ノルアドレナリン・ドパミン・アドレナリン・バソプレシンの違い
・それぞれの薬剤が使われる場面
・昇圧剤投与中に看護師が確認したいポイント
・異常時に医師へ報告するときの考え方
結論|昇圧剤は患者の病態と受容体への作用を考えて使い分ける
昇圧剤を理解するときは、「この薬はどの受容体に作用するか」だけで覚えるのではなく、「患者さんの循環がなぜ悪くなっているのか」とセットで考えることが重要です。
代表的な薬剤を整理すると、次のようになります。
| 薬剤 | 主な作用 | 臨床での位置づけ |
|---|---|---|
| ノルアドレナリン | 主にα1による血管収縮 | 敗血症性ショックの第一選択 |
| ドパミン | 用量によりDA・β1・α1作用が変化 | 現在は使用場面が限定的 |
| アドレナリン | α1・β1・β2に作用 | 心停止、アナフィラキシー、ショックなど |
| バソプレシン | V1受容体を介した血管収縮 | 敗血症性ショックでノルアドに追加することがある |
2026年のSurviving Sepsis Campaign(SSC)では、成人敗血症性ショックの第一選択としてノルアドレナリンが推奨され、ノルアドレナリンの必要量が増えている場合にはバソプレシンの追加が提案されています。
敗血症対策キャンペーン:敗血症および敗血症性ショックの管理に関する国際ガイドライン2026
つまり、
「血圧が低いから、とりあえず昇圧剤」ではなく、病態を考えながら薬剤の作用を見る
ことが大切です。
ショックそのものの分類が曖昧な方は、先に「ショックの種類と見分け方」の記事を読んでおくと理解しやすくなります。
【参考記事】ショックの種類と見分け方【救急看護師が現場目線で解説】
昇圧剤を理解するために知っておきたい受容体
カテコラミン系の薬剤を理解するときは、α・β・ドパミン受容体の働きをざっくり押さえておくと整理しやすくなります。
| 受容体 | 主な作用 |
|---|---|
| α1 | 血管収縮 → 血管抵抗・血圧上昇 |
| β1 | 心収縮力・心拍数の増加 |
| β2 | 気管支拡張、血管拡張など |
| DA | 腎・腸間膜などの血管に作用 |
ただし、実際の薬剤作用は「α1だから血圧」「β1だから心拍数」と単純に分けられるものではありません。
投与量や患者さんの状態によって作用の出方は変わります。
また、バソプレシンはカテコラミンではなく、主にV1受容体を介して血管を収縮させる薬剤です。

ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)
主な作用
ノルアドレナリンは、主にα1受容体へ作用して血管を収縮させます。
β1作用もありますが、臨床的にはまず、「血管抵抗を上げて血圧を保つ薬」とイメージすると分かりやすいです。
使われる場面
代表的なのが敗血症性ショックです。
敗血症性ショックでは血管拡張によって血管抵抗が低下し、血圧を保てなくなることがあります。
2026年SSCでも、成人敗血症性ショックではノルアドレナリンがドパミンやアドレナリンより第一選択として推奨されています。
ここで重要なのは、「ノルアドレナリンが入っている=血圧だけを見ればいい」ではないことです。
昇圧できていても、末梢循環や臓器灌流が十分とは限りません。
ノルアドレナリン投与中に見るポイント
まず確認するのは、医師と共有している目標血圧・目標MAPに対して現在どうなっているかです。
成人敗血症性ショックでは、2026年SSCは初期MAP目標として65mmHgを推奨しています。ただし、これは敗血症性ショックにおける初期目標であり、すべての患者さんに一律で当てはめる数字ではありません。
血圧だけでなく、心拍数・不整脈、意識、尿量、四肢の冷感、皮膚色、CRT、乳酸値の推移などを合わせて確認します。
「血圧は上がった。でも尿が出ない」
「MAPは保てているけれど、末梢が冷たくなってきた」
という変化にも目を向ける必要があります。
ドパミン
主な作用
ドパミンは、投与量によって作用する受容体の比率が変化する薬剤です。
低用量ではドパミン受容体への作用、中等量ではβ1作用、高用量になるにつれてα1作用が強くなる、と理解されてきました。
ただし、実際の患者さんでは作用をきれいに用量だけで区切れるわけではありません。
そのため、「この量なら必ずこの受容体だけに作用する」と覚えない方がいいです。
「腎保護のための低用量ドパミン」とは考えない
以前は、低用量ドパミンによって腎血流を増やし、腎機能を保護するという考え方がありました。
しかし現在は、腎保護を目的として低用量ドパミンを使用する考え方は推奨されていません。
「DA受容体に作用して腎血流が増える」という薬理作用と、「患者さんの腎機能を守れる」という臨床効果は同じではない、という点が重要です。
現在のドパミンの位置づけ
現在、敗血症性ショックではドパミンよりノルアドレナリンが優先されます。特にドパミンでは頻脈や不整脈に注意が必要です。2026年SSCでも、敗血症性ショックではノルアドレナリンがドパミンより第一選択として推奨されています。
そのため、「ドパミン=心原性ショックに使う薬」のように固定して覚えるのはおすすめしません。患者さんの循環動態や心拍数、不整脈の有無などを踏まえて医師が薬剤を選択します。
ドパミン投与中に見るポイント
特に注意したいのが、心拍数と不整脈です。
昇圧できていても、心拍数が大きく上昇したり、不整脈が出現したりしていないかを確認します。
また、「投与量を上げたあとに血圧はどうなったか」「心拍数はどう変化したか」というように、投与量の変化と患者さんの反応をセットで見ることが重要です。
アドレナリン(エピネフリン)
主な作用
アドレナリンはα1・β1・β2受容体に作用します。
そのため、血管収縮、心収縮力・心拍数の増加、気管支拡張など、複数の作用を持っています。
心停止で使用するアドレナリン
アドレナリンは成人心停止時に使用される重要な薬剤です。
2025年AHAガイドラインでは、成人心停止時のアドレナリンについて1mgを3〜5分ごとに投与することが妥当とされています。
そのため、元記事にあった「2サイクルごと」とだけ覚えるより、「3〜5分ごと」と理解しておく方が正確です。
実際の蘇生では施設の蘇生プロトコルに従ってください。
アナフィラキシーでも第一選択
アドレナリンはアナフィラキシーでも第一選択となる薬剤です。
アナフィラキシーでは、まず大腿部への筋肉注射が基本となります。AHA・American Red Crossの2024年ガイドラインでも、アナフィラキシーの初期治療として筋肉内アドレナリンが中心とされています。
心停止時の静注・骨髄内投与とは投与経路も用量も異なるため、「同じアドレナリンでも、状況によって投与方法が違う」ことを整理しておく必要があります。
敗血症性ショックで使うこともある
アドレナリンは心停止やアナフィラキシーだけではありません。
2026年SSCでは、敗血症性ショックでノルアドレナリンとバソプレシンを使用してもMAPが不十分な場合、アドレナリンの追加が提案されています。
つまり、「アドレナリン=心停止の薬」だけではないということです。
アドレナリン投与中に見るポイント
β1作用による頻脈や不整脈、血圧上昇などを確認します。
またアドレナリンは乳酸値を上昇させることがあるため、乳酸値だけを単独で見ず、循環動態や末梢灌流、臨床経過と合わせて評価します。
バソプレシンも知っておきたい
昇圧剤を勉強するなら、ノルアドレナリン・ドパミン・アドレナリンに加えて、バソプレシンも押さえておきたい薬剤です。
バソプレシンはα・β受容体ではなく、主にV1受容体を介して血管を収縮させます。
2026年SSCでは、敗血症性ショックでノルアドレナリンの必要量が増えている場合、さらにノルアドレナリンだけを増量するのではなく、バソプレシンの追加が提案されています。
つまり敗血症性ショックでは、ノルアドレナリンを中心に循環を支え、必要に応じて作用機序の違うバソプレシンを組み合わせるという考え方があります。
4種類の昇圧薬を比較
| ノルアドレナリン | ドパミン | アドレナリン | バソプレシン | |
|---|---|---|---|---|
| 主な受容体 | α1、β1 | DA、β1、α1 | α1、β1、β2 | V1 |
| 主な特徴 | 血管収縮 | 用量で作用が変化 | 血管・心臓・気管支へ作用 | 非カテコラミン性の血管収縮 |
| 代表的な場面 | 敗血症性ショック | 使用場面は限定的 | 心停止・アナフィラキシー・ショック | 敗血症性ショックで追加 |
| 特に見る点 | 血圧・末梢灌流 | 頻脈・不整脈 | 頻脈・不整脈・血圧 | 血圧・末梢循環 |
昇圧剤投与中に看護師が確認したいこと
昇圧剤が開始されたら、血圧の数字だけを追うのではなく、薬剤を増減したことで患者さん全体がどう変化したかを確認します。

血圧・MAPと投与量をセットで見る
「血圧80mmHg」という一点だけではなく、「ノルアドレナリンを増量してMAPがどう変わったか」
というように経時的に見ます。
目標MAPや収縮期血圧は患者さんによって異なるため、医師と目標値を共有しておくことが重要です。
心拍数と心電図
カテコラミンでは頻脈や不整脈が起こることがあります。
血圧が上昇していても、心拍数が急増していないか、新たな不整脈が出ていないかを確認します。
臓器灌流を見る
昇圧剤を使う目的は、単にモニター上の血圧を高くすることではありません。
重要臓器への血流を保つことが目的です。
意識状態、尿量、末梢の冷感、皮膚色、CRT、乳酸値などを合わせて確認します。2026年SSCでも、敗血症・敗血症性ショックでは乳酸値の推移やCRTを灌流評価に利用することが提案されています。
投与ルートと刺入部を見る
以前は「昇圧剤は中心静脈から投与する」と覚えた人も多いと思います。
しかし、2026年SSCでは、敗血症性ショックで中心静脈路の確保を待って昇圧薬開始を遅らせるより、必要であれば末梢静脈から開始することが提案されています。
だからといって、末梢投与ならどこでもよいという意味ではありません。
血管外漏出による組織障害のリスクがあるため、刺入部の疼痛・腫脹・発赤・漏れなどを頻回に確認し、投与方法は施設の手順に従います。
2026年SSCでは、末梢投与について具体的な使用時間や静脈路のサイズ・部位までは十分な根拠がないとしています。
ルート操作にも注意する
昇圧剤が流れているルートを不用意にフラッシュすると、薬剤が急速に患者さんへ入る可能性があります。
また、他薬剤との配合変化や投与速度への影響にも注意が必要です。
専用ルートや単独ルーメンを使用するかどうかも含め、施設の手順や薬剤ごとの配合情報を確認してください。
昇圧剤の異常を医師へ報告するときに伝えたいこと
「血圧が低いです」だけでは、患者さんの変化を十分に伝えられないことがあります。
例えば、
「ノルアドレナリンを増量しましたが、目標MAPまで上がっていません。心拍数も上昇しており、尿量が減少しています。四肢冷感も強くなっています」
のように、
現在の薬剤・投与量の変化+血圧・MAP+心拍数+臓器灌流の変化をまとめて伝えると、状態を共有しやすくなります。
医師への報告方法については、【関連記事】看護師の医師への報告はどうする?SBARの伝え方と具体例を解説で詳しくまとめています。
昇圧剤を見るときもABCDEで患者全体を評価する
昇圧剤が投与されていると、どうしても血圧に意識が向きます。
しかし、ショック患者では呼吸状態や意識状態なども同時に変化します。
例えば、
Bでは呼吸数・SpO2・呼吸状態、Cでは血圧・心拍数・尿量・末梢循環、Dでは意識状態を確認します。
昇圧剤が入っているからといって「Cだけを見る」のではなく、
患者さん全体を繰り返し評価することが重要です。
ABCDEの評価方法については、【関連記事】ABCDEアプローチ(ABCDE評価)とは?救急看護の一次評価を図解で解説にまとめています。
まとめ|昇圧剤は「薬の名前」より「なぜ使っているか」を考える
昇圧剤は、それぞれ受容体への作用や臨床での位置づけが異なります。
ノルアドレナリンは敗血症性ショックの第一選択となり、ドパミンは現在では使用場面が以前より限定されています。
アドレナリンは心停止やアナフィラキシーだけでなく、状況によってはショックの昇圧にも使用されます。バソプレシンも、敗血症性ショックでノルアドレナリンに追加される重要な薬剤です。
看護師として重要なのは、
「血圧が上がったか」だけを見ることではありません。
「なぜこの薬が選ばれているのか」
「増量して患者さんはどう変わったのか」
「血圧以外の臓器灌流は改善しているのか」
まで考えて観察することで、昇圧剤の管理が単なる数字の確認ではなくなります。
ハク

僕も新人の頃は、昇圧剤が始まると血圧ばかりを見ていました。でも、薬剤の作用と患者さんの病態を結びつけて考えるようになると、尿量や末梢循環、意識などを見る意味が少しずつ分かるようになります。
まずは「なぜこの薬が入っているんだろう?」から考えてみてください。



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