ICU看護師は何を勉強する?新人におすすめの勉強法と優先順位

救急現場のリアル

こんにちは、ハクです。

ICUに配属されると、覚えなければいけないことの多さに圧倒されることがあります。人工呼吸器、心電図、投与されている薬剤、患者さんの疾患……どこから手をつけていいのか分からず、参考書を開いてもかえって情報量に押しつぶされてしまう。そんな経験をした新人看護師さんは、決して少なくないはずです。

僕自身、救命救急センターでICU・HCUの患者さんを担当してきた中で、新人看護師さんから「何を勉強すればいいですか」と聞かれることが何度もありました。そのたびに伝えているのは、知識を網羅的に覚えることよりも先に、身につけてほしい考え方があるということ!

看護師としての勉強の進め方そのものについては、新人看護師の勉強法の記事でも詳しく解説しています。

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この記事を書いた人

ハク救急・ICU看護師

救命救急センター勤務歴10年以上の現役ナース。認定看護師として院内教育・急変対応研修や学生への講義講師も担当。現場のリアルな経験をもとに記事を書いています。

この記事では、ICUに配属されたばかりの新人看護師さんが、最初にどんな順番で・どんな視点で勉強していけばいいのかを、僕自身の経験と新人指導の中で伝えてきたことをもとに解説していきます。

この記事で分かること

・ICUに配属されたら最初に意識したい勉強の順番
・「なぜ?」を軸にした勉強の考え方
・ICU新人看護師が優先して身につけたい5つの分野と優先順位
・勉強でやりがちな失敗と、勤務を勉強につなげる方法

ハク
ハク

ICUに配属されたばかりの頃は、覚えることの多さに毎日圧倒されていました。今回は、当時の自分にも伝えたかった勉強の考え方をまとめてみます。

ICUに配属されたら何から勉強すればいい?

ICUに配属されたばかりの時期は、人工呼吸器・心電図・薬剤・疾患……と、全部を一度に勉強しようとしなくて大丈夫です。まず意識してほしいのは、受け持った患者さんについて「なぜ今この治療が行われているのか」を考えることです。

ICUは一人の患者さんに関わる情報量がとても多い分野です。呼吸・循環・意識・薬剤・検査データを同時に把握しようとすると、どれも中途半端なまま流れていってしまいます。

例えば人工呼吸器の設定、投与されている薬剤の種類、モニターの数値をすべて同時に暗記しようとすると、勤務が終わる頃には何も頭に残っていない、という状態になりがちです。それよりも、その日受け持った一人の患者さんについて「なぜこの治療をしているのか」を一つだけ考えてみる方が、記憶にも残りやすくなります。

知識を広く浅く集めるより先に、目の前の患者さんを軸に考える習慣をつけること。これがICUの勉強の出発点になるでしょう。

ICUの勉強で大切なのは「なぜ?」を考えること

ICUの勉強の中心にあるのは、暗記量ではなく「なぜ?」を考える視点そのものだと僕は思っています。

数字や薬剤名を丸暗記するだけでは、病態が少し変わっただけで応用が利かなくなってしまいます。ICUで出会う患者さんは、教科書通りの経過をたどるとは限りません。

だからこそ「なぜ今この状態なのか」を考える癖がついているかどうかで、勤務中の判断力に大きな差が出てきます。

ノルアドレナリンが投与されているのはなぜ?

ノルアドレナリンが投与されていたら、「血圧を上げる薬だから」で終わらせず、なぜこの患者さんに昇圧薬が必要なのかを考えます。

敗血症による血管拡張があるのか、循環血液量の不足や心機能低下など、ほかの要因も関係していないか。薬剤だけを見るのではなく、病態や循環動態と結びつけて考えることが大切です。

人工呼吸器が必要なのはなぜ?

人工呼吸器についても同じことが言えます。設定の数字だけを覚えるのではなく、なぜ自発呼吸だけでは足りないのかを考えることが大切です。呼吸筋の疲労が原因なのか、酸素化そのものが悪いのかによって、観察するポイントや異常時に疑う原因が変わってきます。

「なぜ?」を考える習慣がついてくると、初めて出会う状況でも自分で考えて動けるようになります。それがICUの勉強で最初に目指したいところです

まずは患者の状態を整理できるようになる

「なぜ?」を考えるためには、その前提として患者さんの状態を整理する土台が必要です。

情報がバラバラのまま頭に入ってくると、そこから「なぜ」を考える材料がうまく集まりません。まずは情報を整理する型を持っておくことが役に立ちます。

患者がICUに入室した理由を確認する

まず確認したいのは、その患者さんがなぜICUに入室したのかという経緯です。手術後の管理目的なのか、急変後の集中治療目的なのかによって、注意すべきポイントは大きく変わってきます。

今行われている治療を確認する

次に、現在どんな治療が行われているのかを確認します。人工呼吸器、循環作動薬、鎮静薬など、今その患者さんに使われている手段を把握することで、なぜそれが必要なのかを考える土台ができます。

ABCDEで患者の状態を整理する

ABCDEアプローチは、急変時や外傷の評価するときに使われる考え方です。しかし、ICUでも患者さんの状態をA〜Eの視点で整理すると、「今どこに大きな問題があるのか」を把握する助けになります。

ここでは詳しく触れませんが、A〜Eの視点で情報を整理する方法については、ABCDEアプローチの記事でも詳しく解説しています。

整理する型を一つ持っておくと、初めて受け持つ疾患であっても、同じ手順で情報を集められるようになるでしょう。

ICU新人看護師が優先して勉強したい5つのこと

ICUの患者層や施設の特徴によって優先順位は変わりますが、新人看護師さんが患者さんの状態を考える土台として、まず押さえておきたいのが次の5つです。

勉強したい5つのことの画像

①呼吸の基本・酸素療法・人工呼吸器

覚えるのは、酸素化と換気の基本的なしくみ、そしてSpO2・EtCO2が何を示しているかという意味です。そのうえで、なぜ自発呼吸だけでは酸素化・換気が保てないのか、人工呼吸器がそれをどう補っているのかを結びつけて考えます。

患者さんでは呼吸回数や胸郭の動き、グラフィックモニターの波形を見ます。呼吸音の聴き分けについては、副雑音の記事でも詳しく解説しています。

②循環の基本・ショック

覚えるのは、血圧・脈拍・尿量といった循環を示す指標の基本的な見方です。そのうえで、なぜ血圧が下がっているのか、なぜ循環作動薬が必要なのかを考えます。

患者さんでは末梢の冷感や皮膚の色、意識レベルの変化を見ます。ショックの分類や病態については、こちらの記事でも詳しく扱っています。

③ICUでよく使う薬剤

代表的な循環作動薬・鎮静薬・鎮痛薬について、大まかな分類を覚えます。患者さんでは投与量の変化とその反応を見ます。増減されたタイミングと患者さんの状態を結びつけて考えることが、暗記より役に立ちます。

④意識・鎮痛・鎮静

鎮静・鎮痛の評価スケールを使って、患者さんの意識状態を定期的に確認します。数値そのものを覚えるだけでなく、なぜ今その深さの鎮静が必要なのかを考えることを優先してください。

細かいスケールの使い分けは、施設ごとの運用に差があるため、配属先のルールに沿って確認していくのが確実です。

⑤モニター・検査データ

心電図モニターの基本波形や、血液ガスデータの大まかな見方を押さえておきます。数値の正常範囲を覚えることより、その数値が悪化した・改善したという変化の方向を追えるようになることを優先します。

5つを一度に完璧にする必要はありません。受け持った患者さんに関係する分野から、少しずつ深めていけば十分です。

ICUの勉強は「受け持った患者」から広げる

ICUの勉強方法の画像

知識は参考書だけから覚えるより、受け持った患者さんを起点に広げていく方が定着しやすいと感じています。

実際の症例と結びつけて覚えた知識は記憶に残りやすく、似たような場面に出会ったときにも応用が利きます。例えば、肺炎で人工呼吸器管理中の患者さんを受け持った場合、次のような順番で考えを広げていきます。

  • 肺炎で人工呼吸器管理中の患者さんを受け持った
  • なぜ呼吸不全になったのか
  • なぜ人工呼吸器が必要なのか
  • 今の人工呼吸器設定にはどんな意味があるのか
  • 何が改善すれば離脱を考えられるのか
  • そのために看護師は何を観察すればいいのか
  • 分からなかった部分は、勤務後に調べる

こうして疾患・病態・治療・観察・看護を一つずつつなげていくと、バラバラの知識ではなく、一つのストーリーとして頭に残るようになります。この繋げ方を受け持つ患者さんごとに繰り返していくことが、ICUの勉強の基本になります。

ICUの勉強で新人看護師がやりがちな3つの失敗

勉強しているのになかなか身につかないと感じる新人看護師さんには、共通するパターンがあります。情報量に対して勉強の仕方が合っていないことが原因です。

参考書を最初から全部覚えようとする

ICU関連の参考書は情報量が多く、最初から順番通りにすべて覚えようとすると、途中で挫折しやすくなります。

まずは受け持った患者さんに関係する範囲から読む方が、無理なく続けられます。

人工呼吸器の設定や薬剤名だけを暗記する

設定の数値や薬剤名を暗記しても、なぜそれが選ばれているのかが分からないままだと、現場で応用できません。数字よりも、その数字が選ばれている理由を意識してみてください。

疾患・治療・看護を別々に勉強する

疾患は疾患、薬剤は薬剤、と別々に勉強してしまうと、知識同士がつながらず現場で使いにくくなります。一人の患者さんを軸に、疾患から観察までを一続きで考える練習をしてみてください。

失敗のパターンを知っておくだけでも、遠回りを減らすことができます。

勤務中に分からなかったことを勉強につなげる方法

勤務中に感じた「分からない」をそのままにせず、勉強につなげる仕組みを作っておくことが大切です。

勤務後にまとめて全部調べようとすると、量が多すぎて続かなくなってしまいます。

僕がおすすめしているのは、次のようなサイクルです。

勤務中は分からなかったことをメモしておくだけにとどめます。

勤務後は、メモした内容の中から優先順位をつけて、気になるものから確認します。

そして次に同じような治療を受けている患者さんを受け持ったときに、あらためて確認する。

この繰り返しです。勤務中のメモの取り方については、iPadを使った勉強法の記事でも紹介しています。

この繰り返しは、参考書を読むだけの勉強よりも実践的な力になっていきます。

ICUの勉強についてよくある質問

Q.ICU配属前に何を勉強すればいい?

A.配属前は、幅広く暗記するよりも、呼吸・循環の基本的な仕組みをざっくり理解しておく程度で十分です。細かい内容は、配属後に受け持った患者さんを通して身につけていく方が現実的です。

Q.ICUではどんな参考書を使えばいい?

A.施設や領域によって使いやすい参考書は異なります。まずは配属先の先輩看護師さんが使っているものを参考にするのがおすすめです。

Q.新人で人工呼吸器が分からなくても大丈夫?

A.配属直後から人工呼吸器を完全に理解している新人看護師さんはほとんどいません。分からないことを一つずつ「なぜ」で確認していけば、少しずつ理解が追いついていきます。

ICUで必要な知識だけでなく、観察・判断・優先順位の付け方など、ICU看護師に求められる力を全体的に整理したい方は「ICU看護師に必要なスキル」の記事も参考にしてください。

まとめ|ICUの勉強は「なぜ?」を患者とつなげよう

ICUの勉強は、知識をたくさん覚えることよりも、目の前の患者さんに対して「なぜこの治療をしているのか」を問い続けることの方が大切です

呼吸・循環・薬剤といった分野を優先しつつ、受け持った患者さんを起点にして知識を広げていけば、バラバラの暗記に終わらない理解につながっていきます。焦らず、少しずつで大丈夫です。

ハク
ハク

ICUの勉強は、覚えることより「なぜ?」と考える習慣のほうが大事です。焦らず、目の前の患者さんと向き合いながら、少しずつ知識を広げていってくださいね。

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