ABCDEアプローチ(ABCDE評価)とは?救急看護の一次評価を図解で解説

救急現場のリアル

こんにちは、ハクです。

「ABCDEアプローチって、結局なにをどの順番で見ればいいの?」

「先輩に『まずABCDE!』と言われるけど、頭が真っ白になる…」

救急外来やICUに配属されたばかりの頃、僕も同じでした。

ABCDE評価は、急変対応・救急看護のすべての土台になる一次評価の型です。逆に言えば、この型さえ体に入っていれば、どんな患者さんが来ても「まず何をすべきか」で迷わなくなります。

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この記事を書いた人

ハク救急・ICU看護師

救命救急センター勤務歴10年以上の現役ナース。認定看護師として院内教育・急変対応研修や学生への講義講師も担当。現場のリアルな経験をもとに記事を書いています。

この記事では、救命救急センターで10年以上働く認定看護師の僕が、A〜Eそれぞれの観察項目・異常のサイン・初期対応を図解つきで整理しました。

新人さん・看護学生さんはブックマークして、急変対応の前に見返せるようにしておくと安心です。

この記事でわかること
  • ABCDEアプローチの基本と評価する順番
  • A〜Eの観察ポイント・異常のサイン・初期対応
  • 一次評価と二次評価の違い、症例で見る実践の流れ
ハク
ハク

急変のとき、頭の中が真っ白になるのは誰でも同じです。だからこそ「考えなくても順番が出てくる型」を持っておくことが、ABCDE評価は患者さんと自分を守ってくれます。

ABCDEアプローチとは?(一次評価の目的)

ABCDEアプローチとは、急変時や救急患者の初期対応で使う生理学的な評価の型です。

次の5項目を、必ずこの順番でABCDEを評価します。

・Airway:気道

・Breathing:呼吸

・Circulation:循環

・Disability:中枢神経(意識)

・Exposure:体温・外表

A 気道 → B 呼吸 → C 循環 → D 意識 → E 全身観察を横向きフロー

なぜこの順番かというと、「早く命を奪うものから順に並んでいる」からです。

気道が閉塞すれば数分で心停止に至ります。呼吸、循環…と、生命への影響が速い順に確認していく、極めて合理的な順番です。

大事なルールは2つだけ。

・順番を飛ばさない(Cが派手でも、まずAから)

・異常を見つけたら、その場で介入してから次へ進む(評価と介入はセット)

ABCDE評価で確認するポイントを、A〜Eの順番で整理すると次のようになります。

項目何を評価するか主な確認ポイント異常時にまず考えること
A:Airway気道が開通しているか発声、異常な気道音、口腔内の分泌物・吐物・異物気道確保、吸引、早期の応援要請
B:Breathing呼吸・酸素化・換気が保たれているか呼吸数、SpO2、呼吸様式、胸郭や呼吸音の左右差酸素投与、補助換気の準備、原因への対応
C:Circulation循環が保たれているか脈拍、血圧、皮膚所見、CRT、外出血止血、静脈路確保・輸液の準備、ショックへの対応
D:Disability意識・中枢神経に異常がないか意識レベル、瞳孔、麻痺、血糖低血糖など是正できる原因の確認、気道保護、早期報告
E:Exposure全身状態と体温に異常がないか体温、外傷、出血、皮疹、浮腫必要な範囲の全身観察、保温、プライバシーへの配慮

評価の前に:第一印象(数秒のぱっと見評価)

ベッドサイドに着いた瞬間の数秒で、「ヤバいかどうか」をざっくり判断します。

・見た目:ぐったりしていないか、顔色は ・呼吸:胸の上がりはあるか、努力呼吸はないか

・意識:呼びかけに反応があるか

呼びかけに反応がなく、正常な呼吸が確認できない場合は、通常のABCDE評価を続けるのではなく、直ちに応援を要請し、院内の手順に沿って心停止対応を起動してBLSを開始します。

死戦期呼吸は正常な呼吸ではないため、見逃さないようにしましょう。

ここで「ヤバい」と感じたら、評価を続けながら同時に応援要請です。人を呼ぶのが遅れることが、急変対応で一番多い後悔です。

A〜Eそれぞれの観察項目と初期対応

A(Airway):気道は開通しているか

観察項目

  • 発声できるか(話せる=気道は開通している)
  • いびき様呼吸、stridor(吸気時の高調な音)はないか
  • シーソー呼吸・陥没呼吸はないか
  • 口腔内の分泌物・吐物・異物

異常のサイン ・声が出ない、いびき様呼吸、stridor、チアノーゼ

初期対応

  • 用手的気道確保(頭部後屈あご先挙上/下顎挙上)
  • 吸引、(適応があれば)エアウェイ挿入
  • 気道閉塞が疑われたらその場で応援要請

気道は数分が勝負です

B(Breathing):呼吸は足りているか

観察項目

  • 呼吸数(最重要のバイタル。急変の最も早いサインです)
  • SpO2
  • 呼吸様式(努力呼吸、補助筋の使用)
  • 胸郭挙上の左右差、呼吸音の左右差
  • 頸静脈怒張、気管偏位(緊張性気胸のサイン)

異常のサイン

  • 呼吸数の異常(速すぎる・遅すぎる)、SpO2低下、片側の呼吸音減弱

初期対応

  • 酸素投与
  • 換気が不十分ならBVM(バッグバルブマスク)での補助換気
  • 呼吸音の左右差+ショックなら緊張性気胸を疑い、即医師へ


呼吸音の聴取については、肺音の聞き分け方をこちらで詳しく解説しています。

【関連記事】副雑音の種類と聴き分け方|笛様音・いびき音・捻髪音・水泡音を解説

C(Circulation):循環は保たれているか

観察項目

  • 脈拍(速さ・強さ・リズム)
  • 血圧 ・皮膚所見(冷感・湿潤・蒼白)
  • CRT(毛細血管再充満時間):2秒以内が正常
  • 外出血の有無

異常のサイン

  • 頻脈+皮膚の冷感・湿潤(ショックの初期は血圧が保たれることに注意)
  • CRT延長

初期対応

  • 静脈路確保、輸液の準備
  • 外出血があれば圧迫止血
  • 心疾患が疑われれば12誘導心電図

循環の評価で「ショックかもしれない」と感じたときに確認したい所見や、原因を整理する4分類は、【関連記事】ショックの4分類と見分け方|看護師が押さえたい徴候と初期対応で詳しく解説しています。

ショック時に使用する昇圧剤の種類や考え方は、【関連記事】昇圧剤の種類と使い分け【現役救急ナースが解説】ノルアド・ドパミン・アドレナリンの違いとはで解説してます。

D(Disability):意識・中枢神経

観察項目

  • 意識レベル(JCS/GCS)
  • 瞳孔(大きさ・左右差・対光反射)
  • 四肢の麻痺の有無
  • 血糖測定(意識障害を見たら血糖。低血糖は「治せる意識障害」です)

異常のサイン

  • 意識レベルの低下、瞳孔不同、片麻痺

初期対応

  • 低血糖があれば補正
  • 瞳孔不同+意識障害は頭蓋内病変を疑い、即医師へ

E(Exposure):体温と外表

観察項目

  • 体温(高体温・低体温)
  • 全身の外表観察(外傷、皮疹、出血、浮腫)※必要な範囲で脱衣して確認

異常のサイン

  • 低体温、隠れた外傷・出血、紫斑や皮疹

初期対応

  • 観察が終わったらすぐ保温(低体温は循環・凝固を悪化させます)
  • プライバシーへの配慮も忘れずに

ABCDEは、Eまで確認して終わりではありません。異常に介入した後は、その処置によって状態が改善したかを確認し、必要に応じて再びAから評価します。

患者さんの状態が変化したときも、Aに戻って繰り返し評価することが大切です。

A〜Eそれぞれを、観察 → 異常サイン → 初期対応の3段構成でまとめる図

一次評価と二次評価の違い

ABCDEアプローチは「一次評価」です。二次評価との違いを整理しておくと、全体の位置づけがクリアになります。

  • 一次評価(ABCDE):生理学的評価。「いま命に関わる異常」を探して、その場で是正する
  • 二次評価:一次評価で安定を確認してから。SAMPLE聴取(症状・アレルギー・内服・既往・最終飲食・現病歴)と、頭からつま先までの系統的な観察で「原因」を探す

順番のイメージは「まず命を守る(一次)→ それから原因を探す(二次)」

一次評価をすっ飛ばして原因検索に入らない、が鉄則です。

一次評価で生命を脅かす異常に対応した後は、救急隊や家族から必要な情報を集め、原因の特定につなげます。

確認する内容や聞き取りの順番は、【関連記事】救急看護師が実践する情報収集のコツ【救急隊・家族から聞き出す質問】で詳しくまとめています。

実際の症例で見るABCDEの流れ

夜勤帯、「様子がおかしい」とコールがあった高齢の患者さんの例です(詳細は変えています)

  • 第一印象:呼びかけへの反応が鈍い、顔色不良 → この時点で応援要請
  • A:いびき様呼吸あり → 用手的に気道確保、吸引
  • B:呼吸数が多い、SpO2低下 → 酸素投与開始
  • C:頻脈、皮膚は冷たく湿っている → 静脈路確保の準備
  • D:JCSで意識レベル低下、血糖は正常範囲
  • E:発熱あり → 感染源の検索へ

ポイントは、Aのいびき様呼吸に最初に気づけたことです。派手なバイタルの異常(頻脈や発熱)に目を奪われがちですが、順番どおりAから見る型があったからこそ、一番危険な気道の問題を先に処理できました。

症例フロー

ABCDEアプローチのよくある質問

Q1. 「ABCD評価」と「ABCDEアプローチ」は違うもの?

同じ枠組みです。以前はABCDの4項目で語られることも多かったのですが、現在はE(体温・外表)まで含めたABCDEの5項目が標準です。文献や研修によって呼び方が違うだけで、中身の考え方は共通です。

Q2. 覚え方のコツは?

丸暗記より「早く命を奪う順」という理屈で覚えるのがおすすめです。気道閉塞は数分、呼吸不全は十数分、循環不全はさらに…と、タイムリミットが短い順に並んでいると理解すれば、順番を忘れても復元できます。

あとは急変対応シミュレーション(ICLSなど)で体に入れるのが最短です。

Q3. 記録はどう書けばいい?

A〜Eの型のまま書くのが一番伝わります。

例:「A:開通、B:呼吸数◯回・SpO2◯%(酸素◯L投与開始)、C:脈拍◯回・整・皮膚冷感あり、D:JCS◯、瞳孔不同なし、E:体温◯℃」

この形式なら、医師にも申し送り相手にも一瞬で状況を把握できます。

まとめ

  • ABCDEアプローチは「早く命を奪う順」に評価する一次評価の型
  • 順番を飛ばさない、異常があればその場で介入してから次へ
  • 第一印象で「ヤバい」と思ったら、評価と同時に応援要請
  • 意識障害を見たら血糖測定を忘れない
  • 一次評価で命を守ってから、二次評価で原因を探す

急変対応は「知っている」と「できる」の間に大きな壁があります。この記事を読んだら、次の勤務で受け持ち患者さんを頭の中でABCDE順に評価してみてください。平時の練習が、急変時のあなたを助けてくれます。

評価に使う聴診器選びについては、こちらの記事も参考にしてください。

【関連記事】看護師におすすめの聴診器3選|リットマンを救急・ICUナースが実際に比較

ハク
ハク

ABCDEは「新人のための型」ではなく、ベテランも急変のたびに頭の中で回している現役の型です。一緒に体に染み込ませていきましょう。

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