救急看護師は何を勉強する?新人におすすめの勉強法と優先順位

救急現場のリアル

こんにちは、ハクです。

救急外来に配属されると、内科・外科・循環器・脳神経・外傷・中毒・急変対応など、対象になる範囲があまりにも広く、「結局、何から勉強すればいいの?」と感じる人は多いはずです。

参考書を開いても疾患の数が多すぎて、どこから手をつければいいのか分からなくなってしまう。僕自身も新人時代、参考書で勉強した知識が、実際の診療の場面ではうまくつながらなかった経験が何度もあります。

先に結論からお伝えすると、救急看護の勉強は、疾患をひとつずつ丸暗記することよりも、「この情報から次に何が必要になるか」を考えられるようになることの方が大切です。

実は僕自身も、ある中毒の患者さんを受け入れたときに、医師の考えについていけず苦い思いをした経験があります。この話は記事の後半で詳しくお伝えします。

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この記事を書いた人

ハク救急・ICU看護師

救命救急センター勤務歴10年以上の現役ナース。認定看護師として院内教育・急変対応研修や学生への講義講師も担当。現場のリアルな経験をもとに記事を書いています。

この記事でわかること

・救急看護師が最初に身につけたい勉強の考え方
・患者さんが来る前からアセスメントを始める視点
・新人救急看護師が優先して勉強したい5つのこと
・主訴から疾患を考える勉強の進め方
・救急看護の勉強で新人がやりがちな3つの失敗

ハク
ハク

救急外来に配属されたばかりの頃は、覚えることの多さに毎日追われていました。今回は、当時の自分にも伝えたかった勉強の考え方をまとめてみます。

救急看護師は何から勉強すればいい?

救急看護の勉強は、疾患を片っ端から覚えるのではなく、「患者さんから得られる情報」と疾患を結びつけるところから始めるのがおすすめです。

救急外来では、診断がついた患者さんだけを受け持つわけではありません。

多くの場合「胸が痛い」「息苦しい」「意識がおかしい」といった状態から診療が始まります。

だから「心筋梗塞について勉強する」だけでは不十分で、「胸痛という情報が入ったら何を考えるか」という勉強の方が、実際の現場では役に立ちます。

例えば同じ「胸痛」という主訴でも、急性冠症候群や大動脈解離など、緊急性の高い疾患が隠れている可能性があります。

だからこそ、疾患を一つに決めつけるのではなく、「まず何を除外しなければならないか」「到着後に何を優先して確認するか」を考えておくことが大切です。

疾患を覚えることと、主訴から疾患を考えられることは、似ているようで別の力です。ここを意識するだけで、勉強の効率は大きく変わってきます。

救急看護の勉強で大切なのは「患者が来る前から考えること」

救急看護の勉強でもうひとつ大切なのが、患者さんが実際に到着してから考え始めるのではなく、情報が入った時点で考え始める習慣です。

なぜなら、救急外来では準備にかけられる時間が限られているからです。到着してから何が必要かを考え始めていては、対応が後手に回ってしまいます。

主訴や救急隊の情報から疾患を考える

救急隊から電話が入った時点で、アセスメントはすでに始まっています。

年齢、主訴、バイタルサイン、既往歴といった情報が入った段階で、「何が起きている可能性があるか」を考え始めます。

ここで大事なのは、疾患をひとつに決めつけないことです。可能性のある疾患をいくつか思い浮かべておくことで、到着後の観察や検査の抜け漏れを減らせるでしょう。

考えた疾患から必要な評価・検査を予測する

考えられる疾患が浮かんだら、次は「到着したら何を最初に見るか」「血圧やSpO2など、どのバイタル変化に特に注意するか」「12誘導心電図は必要か」「採血は」「CTへ早く進む可能性はあるか」といった、次に必要になることを予測します。

疾患の知識を、実際の行動につなげるところまでがセットです。

治療まで考えて受け入れ準備をする

さらに、患者さんの状態から、酸素投与やルート確保、緊急検査への移動、循環作動薬などが必要になる可能性まで予測します。

実際の準備や投与は医師の指示や施設の手順に沿って行いますが、「この先どんな治療が必要になりそうか」を考えておくだけでも、受け入れ後の動きは変わってきます。

患者さんが来てから準備するのではなく、来る前に次の展開を予測して準備しておく。

これによって、受け入れから検査、治療までの流れをスムーズにつなげられます。この一連の予測の積み重ねこそが、救急看護の勉強で身につけたい力です。

救急患者の受け入れ前に情報から検査や治療を予測する看護師

新人救急看護師が優先して勉強したい5つ

優先順位をつけるなら、まずは次の5つから手をつけるのがおすすめです。救急外来で日々遭遇する場面に直結する分野だからです。

優先勉強すること身につけたい視点
1ABCDE・緊急度何を最優先で見る?
2主訴と疾患この症状から何を考える?
3フィジカルアセスメント所見は何を意味する?
4検査・処置・薬剤次に何が必要になる?
5情報収集・報告何を集め、何を伝える?

①ABCDEと緊急度評価

まず身につけたいのは、「何を優先して見るか」という視点です。ABCDEの詳しい内容についてはここでは触れませんが、系統的に患者さんの状態を評価する考え方については、ABCDEアプローチの記事でも詳しく解説しています。

参考記事:ABCDEアプローチ(ABCDE評価)とは?救急看護の一次評価を図解で解説

②主訴から考える代表的な疾患

疾患別に勉強するだけでなく、胸痛・呼吸困難・意識障害・腹痛・発熱・頭痛といった代表的な主訴から、考えられる疾患を広げていく勉強もおすすめです。

ここではすべての鑑別疾患を列挙することはしませんが、代表的な主訴ごとに「何が考えられるか」を整理しておくと、実際の受け入れ時に思考のとっかかりができます。

③フィジカルアセスメント

患者さんから得られる所見を、疾患と結びつけて考えます。バイタルサインの数値だけでなく、「なぜこの呼吸音なのか」「なぜ皮膚が冷たいのか」「なぜ意識が悪いのか」まで考える習慣をつけることが大切です。

呼吸音の聴き分けについては副雑音の記事で、循環の異常についてはショックの記事でそれぞれ詳しく解説しています。

関連記事:副雑音の種類と聴こえ方を図解で解説【笛音・いびき音・捻髪音・水泡音】

関連記事:ショックの種類と見分け方【救急看護師が現場目線で解説】

④救急でよく行う検査・処置・薬剤

手順をそのまま暗記するのではなく、「なぜこの患者さんに、この検査・処置・薬剤が必要なのか」まで考えることを意識してください。この視点があるかどうかで、記事の後半でお伝えするCO中毒の経験のように、現場での動き方が大きく変わってきます。

⑤情報収集と医師への報告

救急外来では、短時間で必要な情報を集める必要があります。集める、考える、報告する、この一連の流れをセットで勉強しておくことが大切です。

情報収集の考え方については、情報収集の記事でも詳しく解説しています。

参考記事:救急看護師が実践する情報収集のコツ【救急隊・家族から聞き出す質問】

5つを一度に完璧にする必要はありません。日々の受け入れの中で、少しずつ深めていけば十分です。

救急の疾患は「主訴」から勉強するとつながりやすい

救急の勉強は、疾患名から覚えるより、主訴を起点に広げていく方が実際の現場とつながりやすいと感じています。

主訴から出発した勉強は、そのまま受け入れ時の思考の流れと一致するからです。

例えば「胸痛」という主訴を受けたとします。どんな疾患が考えられるか、その中で緊急性が高いものは何か、何を聞くか、何を観察するか、どんな検査が行われそうか、何を準備するか。

この順番で一つずつ考えていくと、疾患ごとの医学的な詳細に踏み込まなくても、勉強の思考過程そのものが身についていきます。

主訴を起点にした勉強を繰り返していくと、疾患知識がバラバラに蓄積されるのではなく、実際の受け入れの流れに沿った形で頭に残るようになります。

知識が「次の行動」につながらなかった新人時代の経験

ここからは、僕自身が新人時代に経験した、知識と行動がうまくつながらなかった出来事を紹介します。

知っているつもりの知識でも、実際の場面で使えるとは限らないことを、身をもって知った経験だからです。

CO中毒で医師の考えについていけなかった

CO中毒の患者さんを受け入れたときのことです。医師は早い段階で血液ガスを採取し、COHb(一酸化炭素ヘモグロビン)を確認しようとしていました。

当時の僕は、CO中毒だからCOHbを確認する、そのために早期の採血が必要になる、という流れをとっさに予測できていませんでした。CO中毒という疾患名は知っていたのに、その知識が次の行動の予測にはつながっていなかったのです。

今なら、救急隊から「CO中毒疑い」という情報が入った段階で、「到着後に何を評価し、どんな検査や治療につながる可能性があるか」を考えながら受け入れ準備をします。

この違いこそが、知識と経験を積み重ねてきた実感です。

目の前の治療に集中して外傷患者の保温を忘れた

もう一つ印象に残っているのが、外傷患者さんを受け入れたときの経験です。

目の前の処置や治療を追うことに集中してしまい、保温など、患者さん全体を見る視点が抜けてしまったことがありました。

重症外傷では、低体温がアシドーシスや凝固異常とあわせて予後を悪化させる重要な因子とされており、保温は治療そのものと同じくらい大切な看護ケアです。目の前の処置に集中するあまり、この視点が抜けてしまったことを、今でも反省しています。

この二つの経験から学んだのは、知識として疾患を知っていることと、その知識から次の診療を予測できることは別だということです。

救急では「今やっていること」だけを見るのではなく、患者さん全体を見ながら次に必要になることを考える視点が欠かせません。この視点は、ABCDEで系統的に評価する考え方とも重なります。

受け入れ後に「答え合わせ」をすると勉強になる

受け入れが終わったあとに、自分の予測を振り返る「答え合わせ」をすることも、力をつけるうえで役に立ちます。

受け入れ中は目の前の対応に追われて、自分がどこまで予測できていたかを振り返る余裕がないことが多いからです。

受け入れ対応が落ち着いたあとに、次の流れで振り返ってみます。

・最初に入った情報
・自分が考えた疾患
・実際の患者さんの所見
・行われた検査
・診断
・行われた治療

そのうえで、「最初の情報から、自分はどこまで予測できていたか」を考えます。予測できなかった部分こそが、次に勉強すべき内容になります。この答え合わせを繰り返していくことが、経験を力に変えていく一番の近道です。

救急看護の勉強で新人がやりがちな3つの失敗

勉強しているのになかなか身につかないと感じる新人看護師さんには、共通するパターンがあります。

情報量に対して勉強の仕方が合っていないことが原因です。

疾患を一つずつ丸暗記する

疾患の知識自体は必要です。ただし救急では、それに加えて「症状から疾患を考える」力も求められます。丸暗記だけに偏らないよう意識してみてください。

検査や処置の手順だけを覚える

12誘導心電図の取り方は分かっても、なぜ今すぐそれが必要なのかが分からなければ、次の行動の予測にはつながりません。手順よりも、その手順が必要になる理由を意識することが大切です。

勤務後に参考書を読むだけで終わる

参考書だけで完結させず、実際に担当した患者さんと結びつけることが大切です。「今日分からなかったことを1つ調べる」程度から始めるだけでも、知識の定着度は変わってきます。

勤務後の勉強の進め方については、iPadを使った勉強法の記事でも紹介しています。

参考記事:看護師がiPadで勉強する方法【Split View・GoodNotes・モデル選びまで解説】

失敗のパターンを知っておくだけでも、遠回りを減らすことができます。

救急看護師の勉強についてよくある質問

Q.救急外来に配属される前は何を勉強すればいい?

A.ABCDEやバイタルサイン、呼吸・循環の基本など、まずは土台となる部分から勉強しておくと安心です。すべての疾患を覚えてから配属される必要はありません。

Q.救急外来ではどんな疾患を勉強すればいい?

A.疾患名を網羅的に覚えるより、まずは遭遇しやすい主訴から広げていく方が、実際の現場では役立ちます。

Q.救急の勉強についていけないときはどうすればいい?

A.一度に全部覚えようとせず、その日受け持った患者さんから1つずつ振り返るところから始めてみてください。

Q.救急看護師におすすめの参考書はある?

A.おすすめの参考書については、救急看護師向けの本の記事でまとめています。

参考記事:救急看護師おすすめ本ランキング8選【現役認定看護師が厳選】

まとめ|救急看護の勉強は「次に何が必要?」を考えよう

救急看護師の勉強は、疾患や処置をたくさん暗記することだけではありません。

主訴や救急隊から得た情報をもとに、「何が起きている?」「何を確認する?」「どんな検査や治療が必要になる?」と考える。その積み重ねが、患者さんが到着する前から次の行動を予測する力につながっていきます。

焦らず、日々の受け入れの中で少しずつ身につけていってください。

ICUに配属された場合の勉強の進め方については、ICU看護師の勉強法の記事でも解説しています。

急変時の対応についてさらに詳しく知りたい方は、急変対応の記事も参考にしてください。

ハク
ハク

救急の勉強は、覚える量より「次に何が必要か」を考える習慣の方が大事です。焦らず、目の前の患者さんと向き合いながら、少しずつ力をつけていってくださいね。

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